医療施設の設計でよくあるトラブルとその回避法|建設マネジメント会社の視点から解説

医療施設の建設・設計は、一般的なオフィスや商業施設とは大きく異なり、特有の機能性・法規制・衛生管理基準などを考慮する必要があります。しかし、実際のプロジェクトでは、設計段階でのトラブルが後々のコスト増や開業遅延につながるケースが少なくありません。
この記事では、建設マネジメント(CM)会社の視点から、医療施設の設計で起こりやすいトラブル事例とその回避法を具体的に解説します。
トラブル①:動線設計の不備による業務効率の低下
🔍 事例
受付から診察室、処置室、待合室、検査室などの動線が複雑で、スタッフが何度も行き来しなければならない配置になっていた。結果として、患者対応に時間がかかり、業務効率が大幅に低下。
✅ 回避法
診療フローの「見える化(VSM分析など)」を設計前に実施
医師・看護師など現場スタッフへのヒアリングを重視
スタッフ動線・患者動線・物品動線を明確に分離し、重ならないよう配慮
CM会社はこのような現場視点での設計確認を初期段階から行うため、実務に合ったレイアウトの実現が可能です。
トラブル②:設備容量不足や更新不可な設計
🔍 事例
開業後に新たな医療機器を導入しようとしたところ、電気容量が不足していた。また、配管・ダクト類が床や壁に埋め込まれていたため、更新に大掛かりな工事が必要に。
✅ 回避法
電源容量・空調容量を将来の拡張を見据えて余裕をもって計画
設備配管・配線は更新・点検がしやすいよう露出型または点検口付きに
設備業者と設計者・CM担当が初期段階から連携して設計に反映
特にCM方式では、医療機器ベンダーとの調整も含めた設計監修を行い、トラブルを未然に防ぐことが可能です。
トラブル③:法令・行政対応の認識不足
🔍 事例
消防法や建築基準法、バリアフリー法などの基準を見落とし、建築確認や保健所審査で設計変更を余儀なくされた。その結果、スケジュールが1ヶ月以上遅延。
✅ 回避法
着工前に**設計内容をもとに行政との事前協議(事前相談)**を実施
特に医療施設は保健所の設備要件を正確に理解し反映
医療機器やX線設備など、特定機器に必要な申請も事前に確認
CM会社はこれらの行政調整にも精通しており、複数の専門家(設計者・行政書士・設備業者)と連携して対応できる点が強みです。
トラブル④:施主(医師)と設計者の認識ずれ
🔍 事例
開業医の「イメージ」だけを元に設計が進み、完成後に「思っていたものと違う」という不満が生まれた。再設計による追加コストが発生。
✅ 回避法
モックアップや3Dモデル、図面の簡易化による視覚的な共有
CM方式では、設計者の意図と施主の要望を通訳する中立的な役割を果たす
工事進行中も定期的に現場確認を実施し、イメージのギャップを防ぐ
設計トラブルは「初期の対話」と「調整力」で防げる
医療施設の設計は、「何をするか」以上に「誰とどう進めるか」が成功の鍵です。トラブルの多くは、初期段階でのヒアリング不足、専門家との連携不足、行政対応の遅れによって発生します。
当社では、設計・施工の両面に精通したCM専門スタッフが、施主様と設計者・施工業者・行政の間をつなぎ、トラブルのないスムーズな施設づくりをサポートしています。