スモールコンセッションとは?地方公共施設の新たな再生モデルを解説|官民連携による次世代の施設運営

全国の自治体では、老朽化した公共施設の維持管理や運営負担が大きな課題となっています。
人口減少や利用者減少により、従来の方式では施設の継続運営が難しくなるケースも増えています。

こうした状況のなかで注目されているのが、**「スモールコンセッション(Small Concession)」**という新たな官民連携(PPP/Public Private Partnership)手法です。
大規模なPFI(Private Finance Initiative)事業ほどの投資規模を必要とせず、
地域特性に合わせた柔軟な運営が可能な点が評価されています。

本記事では、スモールコンセッションの仕組みやPFIとの違い、導入メリット、実際の事例、そして今後の展望について、建設マネジメントの視点からわかりやすく解説します。

■ 1. スモールコンセッションとは?

スモールコンセッションとは、公共施設の運営権を民間事業者に一定期間委ねる官民連携の仕組みです。
本来の「コンセッション方式」は、空港・上下水道など大規模インフラで採用されてきましたが、
スモールコンセッションはより小規模な公共施設・地域施設に適用できる点が特徴です。

● 対象となる主な施設
  • 道の駅・観光案内所

  • スポーツ施設・温浴施設

  • 市民会館・文化ホール

  • 公園・キャンプ場・観光拠点施設

● 特徴
  • 投資規模が比較的小さく、自治体が導入しやすい

  • 民間の運営ノウハウを活かして収益性を改善

  • 地域の資源を活用し、持続可能な地域運営を実現

つまり、スモールコンセッションは「大規模PFIの考え方を、地方スケールで活用するモデル」と言えます。

■ 2. PFI・指定管理者制度との違い

制度名概要契約期間民間の自由度主な特徴
指定管理者制度自治体が施設の管理運営を委託約3〜5年低い契約更新が頻繁で短期運営向き
PFI方式民間が設計・建設・運営まで一括約20〜30年高い大規模施設向け・初期投資大
スモールコンセッション小中規模施設を対象に運営権を付与約10〜15年中〜高柔軟な契約設計が可能で導入しやすい

スモールコンセッションは、指定管理よりも民間の裁量が広く、
PFIよりも投資規模が小さいため、地方自治体が現実的に採用しやすい中間的な制度です。

■ 3. スモールコンセッション導入のメリット

① 自治体のメリット
  • 維持管理コストの削減・予算の平準化

  • 民間ノウハウの活用による運営効率の向上

  • サービス品質・利用者満足度の向上

  • 地域経済や観光の活性化につながる波及効果

自治体が苦手とする「集客・プロモーション・事業性評価」などの部分を民間が担うことで、
施設の再生だけでなく、地域全体の魅力向上にも寄与します。

② 民間企業のメリット
  • 安定した長期運営による収益確保

  • 公共事業への参入による新たな事業領域拡大

  • 地域ブランドとの協働によるCSR・ESG推進

近年では、建設・不動産・観光・エネルギー分野の企業が、
地域事業としてスモールコンセッションに積極的に参入するケースも増えています。

■ 4. 導入事例

● 事例①:長野県某温浴施設

老朽化した町営温泉施設をスモールコンセッション方式で再生。
地元企業が運営権を取得し、温浴施設と地産レストランを複合化。
3年で利用者数は約1.8倍に増加し、運営が黒字化しました。

● 事例②:宮崎県 道の駅再生プロジェクト

自治体が運営負担を軽減するため、地元食品会社が中心となって運営を担当。
地元農産物の販売・カフェ運営・観光イベントを組み合わせた結果、
年間来場者数が前年比130%に拡大しました。

これらの事例からも、スモールコンセッションは単なる「委託」ではなく、
地域資源を軸にした官民共同経営の新しい形として機能していることがわかります。

 

■ 5. 建設・再生マネジメントの視点から

スモールコンセッションは運営だけでなく、建設・改修段階でも計画力が重要です。

  • 長寿命化・省エネ化を考慮したリニューアル設計

  • 運営動線を考慮した空間構成・ゾーニング

  • コスト・スケジュールを最適化するVE提案

  • 行政・運営者・設計者間の調整を行うCM(Construction Management)の導入

建設マネジメントの視点を取り入れることで、
施設の再生と運営を一体的に設計し、長期的に持続可能な公共施設経営を実現できます。

■ 6. 今後の展望

国土交通省は「公共施設等総合管理計画」の中で、
民間活力の導入を進める新たなスキームとしてスモールコンセッションを推奨しています。

今後は特に以下の分野で導入が拡大すると見込まれています。

  • 地方の温浴・観光・スポーツ施設

  • 公共住宅・文化施設の複合再生

  • 既存PFI事業からの転換・再構築

**「小規模でも継続できる官民連携」**が、これからの地方創生におけるキーワードとなるでしょう。

 

スモールコンセッションは、
指定管理制度では対応しきれない運営改善ニーズと、
PFI方式のような大規模投資の間を埋める実践的で柔軟なPPPモデルです。

比較項目指定管理者制度PFI方式スモールコンセッション
対象規模小規模大規模中小規模
契約期間3〜5年20〜30年10〜15年
民間裁量中〜高
導入目的管理効率化投資促進地域再生・収益改善

スモールコンセッションは、自治体・企業双方にとって現実的な連携モデルとして注目されており、
地域資源を最大限に活かした公共施設マネジメントの新しい形を切り拓いています。

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