医療機器導入と建築設計の連携ポイント
開業トラブルを防ぐための基本とCM会社の役割
診療所やクリニックを開業する際、医療機器の選定と導入は診療方針に直結する重要な要素です。
しかし、機器の仕様を十分に考慮せずに設計・工事を進めてしまうと、建築後に「設置できない」「法対応が不十分」などの問題が発生することがあります。
この記事では、医療機器導入と建築設計をスムーズに連携させるためのポイントを、CM(コンストラクション・マネジメント)会社の視点で解説します。
1. 医療機器と建築設計の関係とは?
CT・レントゲン・MRIなどの医療機器は、サイズや重量、電力容量、防護性能など高度な建築的要件を伴います。
そのため、機器選定と建築設計は切り離せず、連携が必要不可欠です。
よくあるトラブル例:
床の耐荷重不足で機器が設置できない
遮蔽設計が不十分でX線が漏れる恐れ
機器納入の経路が確保されていない(搬入不可)
医療ガス・配線コンセントの位置ズレ
2. 事前に確認すべき医療機器情報
設計開始前に、以下の項目を機器メーカーまたはディーラーと共有・確認することが重要です。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 機器の外形寸法 | CTスキャナ:約2.5m × 2m × 高さ2mなど |
| 重量 | MRI:2〜5トン/一般的X線装置:300〜600kg |
| 電源仕様 | 三相200V・単相100Vなど、専用ブレーカー必要 |
| 冷却・排熱要件 | 一部機器に空調強化や水冷設備が必要 |
| 遮蔽設計要件 | 鉛ガラス・鉛シート厚など機種ごとに指定あり |
| アース条件 | 特定機器はD種接地工事が必要なことも |
3. 建築設計との連携で押さえるべきポイント
✅ 床構造(荷重・防振)
重量機器のある部屋は、床下地の補強設計が必要
特に2階以上に設置する場合は構造計算と補強工事が必須
✅ 機器搬入経路の確保
ドア・廊下・EVのサイズや回転スペースを十分確保
外部搬入時はシャッター・仮設開口部の設計も検討
✅ 遮蔽・防護設計(放射線機器)
X線室は鉛入り壁材・扉・鉛ガラスの設置が必要
遮蔽計算書をもとにレイアウトと厚みを設計に反映
✅ 空調・換気
熱を持つ機器のため、個別エアコン+強制換気を採用
機器からの熱気を直接外に排気できる構造が理想
✅ 電源・LAN・医療ガス
電源はコンセント数・ブレーカー容量・非常電源対応も考慮
機器配置に応じた配線経路とボックスの位置を正確に反映
「設計前の情報共有」が医療機器導入成功のカギ
診療所における医療機器導入は、診療機能だけでなく、建築確認や法対応にも影響します。
特にX線機器・CT・MRI・処置ベッドなどは、構造・電源・遮蔽・空調すべてに関わるため、後からの変更は非常に困難です。
開業計画の初期段階から、医療機器の要件を理解し、それに基づいた設計を行うことが、トラブルを未然に防ぐ最大のポイントです。


