有床診療所の建築基準|病院との違いとCM会社の役割を徹底解説
高齢化や在宅医療の需要が高まる中で、**入院機能を持つ「有床診療所」**の役割が再評価されています。しかし、建築面では一般的な無床クリニックと比べて要件が増え、病院に近い構造・法的対応が求められるため、建設計画には注意が必要です。
本記事では、コンストラクション・マネジメント(CM)会社の視点から、有床診療所の建築基準と病院との違い、計画段階での実務ポイントを解説します。
有床診療所に求められる建築基準の特徴
✅ 1. 建築基準法上の特殊建築物に該当
有床診療所は、「多数の人が就寝する施設」として特殊建築物扱いとなり、
建築確認申請が必須
耐火建築物であること(一定規模以上)
避難階・階段・防火区画・構造区画の設置が必要
✅ 2. 消防法の強化適用
火災報知設備・誘導灯・非常用照明・避難器具の設置
一部構造ではスプリンクラーの設置が義務
患者の避難が困難なことを想定した防火区画の設計が求められる
✅ 3. バリアフリー法・福祉条例の対象
高齢者や身体障害者の入院を想定し、
廊下の幅(1.5m以上)
段差解消・手すり・トイレの広さ・車椅子対応
エレベーターやストレッチャー対応の出入口も考慮
病院との主な違いは?
| 項目 | 有床診療所 | 病院 |
|---|---|---|
| 入院ベッド数 | 最大19床 | 20床以上 |
| 設置許可の要否 | 不要(保健所届出制) | 必要(都道府県知事の許可制) |
| 診療機能 | 小規模な入院治療・観察 | 高度医療・手術・集中治療等 |
| 建築構造要件 | 一部強化(避難・防火・耐火) | 全面的に病院構造規定を適用 |
| 消防・BCP対応のレベル | 限定的対応 | BCP・防災・感染症対策など総合対応 |
建築計画でよくある課題と落とし穴
✅ 既存テナントでの用途変更に時間がかかる
✅ 階上階への計画でエレベーター・搬入動線に制約
✅ 医療機器と配線・空調が干渉し、工事のやり直しが発生
✅ スプリンクラー・防火扉の設置忘れで消防検査NG
✅ 入院室に必要な採光・換気・面積が足りない
これらは設計初期の段階での情報不足や法令解釈ミスから発生しがちです。
“小さな病院”とも言える有床診療所の建築はプロとの連携が鍵
有床診療所は、医療法上は診療所であっても、建築・消防・設備・動線においては病院に近い複雑な施設です。
そのため、ゼネコン任せではなく、中立的立場で全体を調整できるCM会社の支援を受けることで、スムーズで法的にも確実な施設づくりが可能になります。


