本社ビル建て替えで仮移転は必要?業務を止めない計画の立て方

本社ビルの建て替えを検討する際、多くの発注者が悩むのが「工事中にどこで業務を続けるか」という問題です。

既存の本社ビルを解体して新築する場合、原則として現在の建物を使い続けることはできません。そのため、一時的に別のオフィスへ移転する「仮移転」が必要になるケースが多くあります。

一方で、敷地に余裕がある場合や、別棟を先に建設できる場合、あるいは改修工事を段階的に進める場合には、仮移転を最小限に抑えられることもあります。

本社ビル建て替えでは、建設費や設計内容だけでなく、仮移転費、二重賃料、通信環境、社員の通勤、取引先対応、業務継続体制まで含めて計画することが重要です。

本記事では、本社ビル建て替え時に仮移転が必要になるケース、不要または最小限にできるケース、仮移転計画で発注者が確認すべきポイントを解説します。

仮移転とは?

仮移転とは、建て替え工事や大規模改修工事の期間中、一時的に別の場所へオフィス機能を移すことをいいます。本社ビルの場合、単に机や椅子を移すだけではありません。経営部門、総務、経理、人事、営業、サーバー、郵便物、代表電話、来客対応、会議室、書庫、倉庫など、会社の中枢機能を一時的に移す必要があります。

そのため、仮移転は「引っ越し作業」ではなく、事業継続計画の一部として考えることが大切です。

仮移転で移すもの主な確認内容
執務スペース社員数、席数、部署配置
会議室来客、社内会議、Web会議
受付機能取引先対応、郵便物、代表電話
サーバー・通信ネットワーク、電話、セキュリティ
書類・備品書庫、契約書、保管スペース
倉庫機能商品、サンプル、販促物、備蓄品
社員動線通勤、昼食、外出、来客対応

仮移転を軽く考えてしまうと、工事中の業務効率低下、社員の負担増加、通信トラブル、取引先対応の混乱につながる可能性があります。

本社ビル建て替えで仮移転が必要になりやすいケース

本社ビルの建て替えでは、以下のような場合に仮移転が必要になりやすくなります。

ケース理由
既存建物を解体して同じ敷地に新築する場合工事中に既存建物を使用できない
敷地に余裕がない場合工事エリアと業務エリアを分けられない
全館建て替えを行う場合部分使用が難しい
耐震性や安全性に問題がある場合工事中の利用リスクが高い
電気・給排水・空調などを全面更新する場合インフラ停止期間が発生する
工事中の騒音・振動が大きい場合通常業務に支障が出やすい
来客対応が多い本社の場合工事中の安全性・印象面に課題がある

特に、既存建物を完全に解体してから新築する計画では、仮移転はほぼ必須になります。

また、建物を残しながら段階的に工事する場合でも、騒音、粉じん、停電、断水、動線制限、消防設備の切替などにより、一部部署だけ仮移転が必要になることがあります。

仮移転をしなくてもよいケースはあるのか?

すべての建て替え計画で、必ず全社的な仮移転が必要になるわけではありません。

以下のような条件がある場合は、仮移転を不要または最小限にできる可能性があります。

ケース内容
敷地内に余裕がある既存建物を使いながら別棟を先に建設できる
段階的な建て替えが可能一部を解体・新築しながら順番に移動できる
別拠点をすでに持っている既存支店や倉庫へ一部機能を移せる
リモートワークを活用できる仮事務所の面積を小さくできる
建て替えではなく大規模改修で対応できるフロア単位・エリア単位で工事可能
一部機能だけ外部化できる書庫、倉庫、会議室などを外部利用できる

ただし、仮移転をしない計画には注意も必要です。

工事エリアと執務エリアが近い場合、騒音、振動、粉じん、作業員動線、資材搬入、来客動線、消防避難経路などの管理が難しくなります。安全性や業務効率を考えると、仮移転した方が結果的にスムーズな場合もあります。

仮移転を避けることだけを優先するのではなく、工事費、工期、業務影響、安全性、社員負担を総合的に比較することが重要です。

仮移転計画で最初に決めるべきこと

仮移転を検討する際は、まず「どの機能を、どの期間、どこへ移すのか」を整理します。いきなり仮事務所を探すのではなく、以下の順番で検討すると計画しやすくなります。

 
STEP 1 建て替え工事の範囲を確認する

STEP 2 仮移転が必要な部署・機能を整理する

STEP 3 仮移転期間を想定する

STEP 4 必要な面積・席数・会議室数を確認する

STEP 5 通信・サーバー・セキュリティ条件を整理する

STEP 6 仮事務所候補を比較する

STEP 7 移転スケジュールと費用を確認する

STEP 8 社員・取引先・関係者へ周知する
 

仮移転計画は、建て替え工事のスケジュールと連動します。設計や施工会社選定が進んでから慌てて仮事務所を探すと、希望する場所や条件で確保できない可能性があります。

そのため、建て替えの基本構想段階から仮移転の必要性を検討しておくことが重要です。

仮移転先を選ぶときの確認ポイント

仮移転先を選ぶ際は、賃料だけで判断しないことが重要です。一時的なオフィスであっても、社員が毎日働き、取引先と連絡を取り、会社の中枢機能を維持する場所になります。

確認項目内容
立地社員の通勤、取引先訪問、駅からの距離
面積席数、会議室、書庫、倉庫スペース
契約期間工期に合わせた短期契約が可能か
賃料・初期費用敷金、礼金、保証金、原状回復費
通信環境インターネット、電話、VPN、Wi-Fi
電気容量PC、複合機、サーバー、空調に対応できるか
セキュリティ入退室管理、鍵、警備、防犯カメラ
会議室来客対応、Web会議、役員会議
駐車場社用車、来客、搬入車両
原状回復退去時の工事範囲と費用

特に注意すべきなのは、通信環境です。

仮事務所に入居できても、インターネット回線や電話番号の移行が間に合わなければ、業務に支障が出ます。代表電話、内線、複合機、VPN、クラウド環境、サーバー、セキュリティ設定などは、早めに情報システム担当者と確認しておく必要があります。

仮移転で発生する主な費用

本社ビル建て替えでは、建設費だけでなく仮移転に関する費用も見込む必要があります。仮移転費を予算に入れていないと、後から総事業費が大きく増えることがあります。

費用項目内容
仮事務所賃料工事期間中の賃料
敷金・保証金契約時に必要な初期費用
仲介手数料不動産会社への手数料
内装工事費間仕切り、床、電気、LAN工事
通信工事費インターネット、電話、VPN設定
移転費引っ越し、什器搬送、書類移動
什器・備品費デスク、椅子、棚、複合機
原状回復費仮事務所退去時の復旧工事
二重賃料移転準備期間や退去期間の重複費用
社員対応費通勤費変更、案内、環境整備

仮移転費は、工事期間が延びると増加します。そのため、建て替え計画では、仮移転期間を短くするための工程管理も重要です。

また、仮事務所の契約期間が工期と合わない場合、契約延長や再移転が必要になる可能性があります。工期の遅延リスクを考慮し、余裕を持った契約条件を検討することが大切です。

業務を止めないためのIT・通信計画

本社機能を仮移転する際、最も重要な項目のひとつがIT・通信環境です。近年は、クラウドサービス、Web会議、電子契約、社内システム、リモートワークが業務の前提になっています。そのため、仮移転先で通信トラブルが起きると、会社全体の業務に影響します。

確認すべき項目は以下です。

項目確認内容
インターネット回線開通時期、速度、冗長性
電話番号代表番号、部署番号、転送設定
VPN社内システムへの接続
Wi-Fi席数や会議室に応じた設計
サーバー移設するか、クラウド化するか
複合機設置場所、電源、ネットワーク設定
セキュリティ入退室、端末管理、情報漏えい対策
Web会議会議室の音響、カメラ、回線品質

特にサーバーを社内に設置している場合は、仮移転を機にクラウド化や外部データセンター利用を検討するケースもあります。

本社ビル建て替えは、単なる建物更新ではなく、働き方やIT環境を見直す機会にもなります。

社員・取引先への影響をどう抑えるか

仮移転では、社員や取引先への影響をできるだけ抑えることも重要です。

社員にとっては、通勤経路、席配置、会議室の使い方、休憩スペース、書類保管、電話対応などが変わります。取引先にとっては、来社場所、郵送先、電話番号、担当者連絡先が変わる可能性があります。

以下のような対応を早めに行うと、混乱を減らしやすくなります。

対応項目内容
社内説明仮移転の目的、期間、移転先、スケジュールを共有
部署別ヒアリング必要席数、書類量、会議室利用を確認
取引先案内移転先住所、電話、来社方法を通知
郵便物対応転送設定、私書箱、受付体制を確認
Webサイト更新住所、アクセス、問い合わせ情報を更新
名刺・封筒必要に応じて一時的な表記を準備
来客導線受付、会議室、案内表示を整備

仮移転期間が長い場合は、「一時的だから不便でもよい」と考えるのではなく、通常業務に近い環境を整えることが重要です。

社員のストレスや業務効率の低下は、目に見えにくいコストになります。

仮移転スケジュールの考え方

仮移転は、建て替え工事の直前に行えばよいわけではありません。仮事務所探し、契約、内装工事、通信工事、移転準備、社内周知、取引先案内には時間がかかります。一般的な流れは以下の通りです。

 
建て替え方針の決定

仮移転の必要性確認

仮事務所の条件整理

候補物件の比較

契約条件の確認

仮事務所の内装・通信工事

移転準備・什器搬入

社員・取引先への案内

仮移転開始

既存本社ビルの解体・新築工事

新本社ビル完成

本移転

仮事務所の原状回復・退去
 

仮移転と本移転の両方が発生するため、通常のオフィス移転よりも管理項目が多くなります。

特に、仮移転先への移転と、新本社ビル完成後の本移転では、それぞれ通信切替、什器搬入、書類整理、社員案内、取引先通知が必要です。二度の移転を前提に、スケジュールと費用を整理しておくことが大切です。

仮移転でよくある失敗

1. 仮移転費を建て替え予算に入れていない

本社ビル建て替えでは、新築工事費や解体費に注目しがちですが、仮移転費も大きな費用になります。

仮事務所賃料、移転費、通信工事費、内装費、原状回復費、二重賃料を見込んでいないと、総事業費が想定より増える可能性があります。

2. 通信工事のスケジュールを軽視する

仮事務所の契約ができても、通信回線の開通が間に合わないと業務を開始できません。インターネット、電話、VPN、セキュリティ設定、複合機、Web会議環境は、移転日から逆算して準備する必要があります。

3. 社員への説明が遅れる

仮移転は社員の働き方に直接影響します。通勤時間、席配置、会議室、休憩スペース、書類保管、来客対応が変わるため、早めに社内説明を行い、部署ごとの要望を整理することが重要です。

4. 工期遅延時の対応を考えていない

建て替え工事では、天候、解体時の想定外、地中障害、資材調達、行政手続きなどにより、工期が延びる可能性があります。

仮事務所の契約期間に余裕がないと、延長費用や再移転リスクが発生します。仮移転計画では、工期遅延時の対応も確認しておきましょう。

5. 本移転の準備を後回しにする

仮移転が完了すると一安心しがちですが、最終的には新本社ビルへの本移転が必要です。本移転では、新しいオフィスのレイアウト、什器搬入、通信切替、セキュリティ設定、社員案内、来客対応を再度行う必要があります。

仮移転計画と本移転計画は、別々ではなく一体で管理することが重要です。

仮移転を最小限にするための工夫

仮移転の負担を減らすためには、計画初期から以下のような工夫を検討します。

工夫内容
リモートワーク活用仮事務所の必要面積を抑える
部署別移転全員ではなく必要部署だけ移す
書庫外部化書類や備品を外部倉庫に保管する
会議室外部利用貸会議室を活用する
既存拠点活用支店や倉庫の一部を活用する
クラウド化サーバー移設リスクを減らす
段階工事可能であれば工事範囲を分ける
仮設建物敷地に余裕がある場合に検討する

ただし、仮移転を小さくしすぎると、社員の働きにくさや業務効率低下につながることがあります。コスト削減と業務効率のバランスを見ながら判断することが大切です。

発注者が準備すべき資料

仮移転計画を進める際は、以下の資料を準備しておくと、検討がスムーズになります。

資料確認する内容
社員数・部署一覧必要席数、部署配置
現在の平面図執務室、会議室、書庫、倉庫の面積
什器リストデスク、椅子、棚、複合機
IT機器リストPC、サーバー、通信機器
電話・通信契約代表番号、回線、ネットワーク
書類・保管物リスト書庫、契約書、備品
来客頻度会議室数、受付機能
社用車・駐車場情報車両台数、来客用駐車場
建て替えスケジュール解体、新築、竣工、本移転時期
予算条件仮移転費、賃料、内装費、通信費

これらの情報を整理しておくことで、仮移転先の面積や条件、必要な工事範囲、移転費用を把握しやすくなります。

仮移転計画のチェックリスト

本社ビル建て替えで仮移転を検討する際は、以下の項目を確認しましょう。

チェック項目確認内容
仮移転の必要性全社移転か、一部移転か
仮移転期間解体・新築・本移転までの期間
必要面積席数、会議室、書庫、倉庫
仮事務所の立地社員通勤、取引先対応、駅距離
契約条件短期契約、延長可否、原状回復
移転費引っ越し、什器、備品、書類
通信環境回線、電話、VPN、Wi-Fi
セキュリティ入退室、情報管理、防犯
社員対応通勤、席配置、社内説明
取引先対応住所変更、郵便物、来客案内
工期遅延対応契約延長、予備費、再移転リスク
本移転計画新本社完成後の移転準備

仮移転は建て替え計画の初期段階から検討する

本社ビル建て替えでは、仮移転が必要になるケースが多くあります。

仮移転は単なる一時的な引っ越しではなく、会社の業務を止めないための重要な計画です。仮事務所の選定、通信環境、社員動線、取引先対応、移転費、工期遅延リスク、本移転まで含めて総合的に検討する必要があります。

特に、既存本社ビルを解体して同じ敷地に新築する場合、仮移転費や二重賃料、通信工事費、原状回復費を建て替え予算に含めておくことが重要です。

また、仮移転を最小限にしたい場合でも、安全性、業務効率、社員負担、工期、工事動線を確認しなければなりません。無理に仮移転を避けるよりも、適切な仮移転計画を立てた方が、結果的に建て替え全体をスムーズに進められる場合もあります。

発注者としては、建て替えの基本構想段階から、仮移転の必要性、仮事務所の条件、移転費用、IT・通信計画、本移転までの流れを整理しておくことが大切です。

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