【2025年最新版】自社ビル建設のタイミングはいつがベスト?
景気と建設コストの関係をCMの視点から読み解く
「建て替えるなら今? それとも待つべき?」
建設費の高騰や景気の先行き不透明感が続くなか、タイミング判断は経営に直結する重大テーマです。本稿では、建設コストの変動要因と景気サイクルとの関係を整理し、コンストラクション・マネジメント(CM)の実務視点で**“建て時”の見極め方**を解説します。
要点(TL;DR)
コストは「資材・人件費・需要・燃料」の複合要因で動く
好況期≠建て時。需要が緩む局面は見積競争が効きやすい
2025〜26年は「待ちすぎない」選択肢も。金利・需給の反転リスクに注意
価格だけで判断せず、事業計画・LCC・柔軟性まで一体で評価
1.建設コストはなぜ上下する?(全体像と押さえ方)
| 要因 | 内容の例 | 影響が出やすい局面 |
|---|---|---|
| 資材価格 | 鋼材・コンクリート・木材。為替や国際需給の影響を受ける | 原油・物流コスト上昇、地政学ショック時 |
| 人件費 | 技能者不足、働き方改革、時間外規制 | 好況期・大型案件集中期 |
| 建設需要 | 再開発・大型インフラ・万博/国際イベント等 | ラッシュ期は見積競争が効きにくい |
| 燃料価格 | 重機稼働・運送費に直結 | 原油高・為替円安時 |
CMの視点:見積書の“単価そのもの”より、**調達戦略(数量・仕様・発注時期)**の設計が効きます。早期に仕様を凍結し、相見積範囲を増やすだけでも数%単位で効きます。
2.景気と建設費は“逆相関”になることも
景気上昇期:案件が殺到し、単価上昇・職人確保難・工期長期化。
景気低迷期:受注余力が戻り、見積競争が進みやすい。
⇒ 需要が緩むタイミングこそ、発注者に有利な条件が出やすいのが実務上の実感です。
注意:低迷期でも、資材が下がらない/金利が上がる等の相殺が起きることあり。単一要因で断定しないのが鉄則。
3.2025年の見立て(傾向と留意点)
一部の大型再開発が一巡し、中小規模で受注余力が戻りつつあるエリアも。
2024年ピークを越えて資材が安定〜一部軟化の兆しが見られた分野もある一方、人件費は高止まりの見方が一般的。
金利上昇リスク:先送りしても調達コスト(金融)が上がればトータルで不利になり得る。
CMの視点:2025〜26年は「待ちすぎない」判断が十分に選択肢。
ただし案件規模・地域・構造で条件は変わるため、自社条件での概算と入札戦略の試算が必須。
4.“早すぎ/遅すぎ”が招くリスクを定量で考える
| タイミング | 起こりがちな失敗 | 対策 |
|---|---|---|
| 早すぎる | 高値掴み/空室リスク/業務要件の未消化 | 需要予測のレンジ設定、段階設計(増床余地) |
| 遅すぎる | 老朽化コスト・BCPリスク/金利上昇/賃料機会損失 | LCC比較、修繕費の織り込み、資金調達の前倒し |
| 判断ミス | レイアウト陳腐化/工程遅延 | 基本設計の凍結徹底、発注方式の適合選定 |
ポイント:建設価格の1〜2割の揺れより、10〜20年の運用収支(LCC)の方が効く場面が多い。“安い時に建てる”より“損しない前提で建てる” が正攻法。
5.自社ビル建設を成功させる5ステップ(実務チェック)
中長期の事業計画と連動
人員計画・拡張余地・移転回避の価値を数値化(賃料対比・機会損失も)
敷地・構造の柔軟性確保
ZEB/省エネ、BCP、フレキシブルレイアウト、将来の用途転換や区画分割余地
建設費とLCCの“見える化”
概算(坪単価レンジ)+維持管理・更新費を合わせてNPVで比較
発注方式と入札戦略の見極め
設計施工一括 or 分離発注/早期パッケージ発注で価格確定リスク低減
“時期”の判定フレームを用意
需要・金利・資材・自社KPI(稼働率/賃料/採用)で四象限の意思決定表を運用
6.今判断するための「クイック診断」テンプレ
次の質問に**YESが多いほど“今寄り”**の判断余地が大きい。
主要エリアで施工キャパに余力がある(=複数社から前向き反応)
金利の先高観が強い/資金調達環境が良い
既存拠点の修繕・BCPリスクが顕在化している
自社の採用・生産性にレイアウト改善効果が大きい
テナント化・賃貸併用で**出口(収益化)**も描ける
YESが少ない場合は、仕様の簡素化/段階建設/規模最適化で“今できる最善”を作るのがCM発想。
7.よくある誤解と打ち手(FAQ)
Q1. 価格が下がるまで待つのが正解?
A. 価格だけを見るとそう思いがちですが、金利・人件費・機会損失で相殺される例が多い。LCCとNPVで総合評価を。
Q2. 下振れリスクが怖い
A. 設計凍結の前倒し/相見積の幅出し/代替材のVE案を初期から準備。発注時期の**スプリット(分散)**も有効。
Q3. いま計画を止めるべき?
A. 止める/進めるの二択ではなく、規模・仕様・スケジュールの三本柱で“今取れる最適”を作るのが実務です。


