診療所用地を選ぶ際の都市計画法・用途地域の見方

開業前に知っておくべき法規制と建築の可否
診療所の開業用地を探す際、立地や周辺環境だけでなく、その土地に診療所が建てられるかどうかを事前に確認する必要があります。
この確認を怠ると、「契約後に建てられないことが判明」「建築確認が通らない」といったトラブルが発生する可能性もあります。
この記事では、診療所開設に適した土地を選ぶための都市計画法・用途地域の基礎知識と、建築CM会社の視点からの注意点をわかりやすく解説します。
1. 都市計画法とは?
都市計画法とは、地域の用途や建築物の種類・高さ・面積などを計画的に整備・保全するための法律です。
この法律に基づき、市区町村は「用途地域(ゆうとちいき)」という土地の使い方のルールを区域ごとに定めています。
2. 診療所を建てられる用途地域は?
用途地域には13種類あり、それぞれ建築できる用途が異なります。
診療所は「医療施設」に該当し、多くの地域で建築可能ですが、一部の地域では制限があるため注意が必要です。
用途地域 | 診療所の建築可否 | 備考 |
---|---|---|
第一種低層住居専用地域 | ○(※制限あり) | 2階建て以下、延床200㎡以下など条件付き |
第二種低層住居専用地域 | ○ | 周辺との調和に配慮 |
第一種中高層住居専用地域 | ○ | 集合住宅と相性◎ |
近隣商業地域 | ◎ | 商業施設・医療モールに向いている |
商業地域 | ◎ | 高い建ぺい率・容積率、駅前開業に最適 |
工業地域 | △ | 建築は可能だが集患面で不利な場合あり |
工業専用地域 | × | 医療施設・住宅は不可(建てられない) |
※「○」でも規模や構造に制限がある場合があります。自治体ごとに異なるため要確認。
3. 開業候補地で確認すべき4つのポイント
✅ ① 用途地域の種別
→ 市区町村の都市計画課や建築指導課で調べることが可能。
土地購入前には必ず公的な都市計画図で確認を。
✅ ② 建ぺい率・容積率
→ 建物の建てられる面積と階数の上限が決まる。
診療所+住宅併設型なら、容積率に余裕がある土地を選ぶべき。
✅ ③ 前面道路の幅員
→ 原則として4m以上の道路に2m以上接していることが建築条件。
接道がない土地は再建築不可や確認申請不可の恐れあり。
✅ ④ 接地インフラ(上下水・ガス・電力)
→ 特に医療機器を多く導入する場合、電力容量の確保が重要。
都市ガスかプロパンか、浄化槽設置が必要かなども確認。
4. CM会社の視点からの注意点
当社のような建築CM会社は、以下のようなチェックやサポートを行います:
設計前の用途地域調査・建築可能面積の試算
法的制限(斜線制限・日影規制等)に基づく基本プランの妥当性チェック
必要に応じて行政との事前協議(開発許可や建築確認事前相談)
テナントビル内開業の場合は、用途変更や確認申請の要否判断
「駅近だから大丈夫」「医療モールっぽい建物だから入れるはず」と思い込まず、
実際の法的制限・構造条件をプロに確認してから進めることが、開業リスクを減らす最大のポイントです。
診療所用地選びでは「立地」+「法的適合性」を両輪で確認
診療所を建てられる土地かどうかは、都市計画法と用途地域でほぼ決まります。
素晴らしい立地でも「建てられない土地」を選んでしまえば、計画そのものが頓挫します。
土地購入・賃貸契約の前に、建築CMの専門家と一緒に法的確認を行うことで、
開業スケジュールやコストの無駄を防ぎ、安心して開業準備を進めることができます。