【地域医療構想 × 病院再編】公的病院の建替えはどう進める?──2025年以降の最適な整備プロセスを専門家が解説
少子高齢化の進行、地域ごとの患者数の偏り、医師不足、医療財政の逼迫──。
こうした背景から、国は「地域医療構想」に基づき、
病院再編・機能分化・役割の再定義を強く推進しています。
その中でも、公立・公的病院は地域医療の中心的役割を担うため、
老朽化した病院の建替えや再編は地域医療計画に直結する重要課題です。
本記事では、建設マネジメントの専門家視点から、
公的病院建替えを進める際に必ず押さえるべきポイント、地域医療構想との整合性、行政協議、建設計画の流れを
実務者向けにわかりやすく解説します。
1. 地域医療構想とは?|病床機能再編の指針となる国の医療政策
地域医療構想は、国が2015年に策定した医療提供体制の改革方針で、
2040年を見据えて以下の4つの病床機能を適正化する取り組みです。
急性期医療
回復期医療
慢性期医療
生活期(在宅含む)
人口減少と高齢化により、
「急性期は縮小」「回復期・在宅は拡大」の流れが続いており、
各自治体は、医療需要に合った病床数と機能の再配置を行う必要があります。
つまり、
新築・建替え・統合を行う公的病院は、この“地域医療構想との整合性”が最重要条件となるのです。
2. 公的病院再編が求められる理由
✔ 老朽化(築40〜50年)の病院が急増
設備更新コストが増え、施設の維持が困難に。
✔ 医師・看護師の働き方改革
スタッフ動線や勤務効率を改善できる建物が求められる。
✔ 災害・感染症対応の強化
BCP対応、感染症病床整備、陰圧室などの整備が必須。
✔ 地域に必要な医療機能の再定義
単独の病院がすべてを担う時代は終わり、
地域全体で役割を分担するモデルに移行している。
3. 公的病院建替えに求められる「地域医療構想との整合性」
建替え計画を進める際、自治体・厚労省・地域医療構想区域との整合性が非常に重要です。
3-1 病床機能の明確化
急性期を維持するのか
回復期病床を強化するのか
介護医療院を併設するのか
役割分担を示す必要があります。
3-2 地域医療支援病院の要件
二次救急を担う場合、手術室・ICU・救急動線などの設備が必要。
3-3 地域包括ケアの流れに対応
高齢者が増加する地域では、回復期・生活期の病床拡充が求められます。
3-4 行政協議を早期に進めること
病院建替えは
自治体・厚労省・消防・議会・財政当局
との協議が不可欠。
特に公立病院は議会承認・財政計画が必要なため、
民間病院より長いプロセスを踏みます。
4. 公的病院建替えの基本プロセス|初期検討から竣工まで
建替えは10〜15年スパンで進む長期プロジェクト。
以下は一般的な実務プロセスです。
【STEP 1】 現状分析(アセスメント)
建物老朽度(劣化診断)
耐震診断
医療機能・病床稼働率
施設運営コスト
スタッフ動線
この段階で建替え/大規模改修/統合の判断材料を揃える。
【STEP 2】 地域医療構想との整合性確認
自治体・地域医療構想調整会議と協議し、
新病院の役割と適正病床数を確定。
【STEP 3】 基本構想(病院の将来像)策定
必要な医療機能
ベッド数
建替え地の選定
BCP・感染症対応方針
コスト・財源計画
人材確保策
DX(電子カルテ・物流管理)の導入
【STEP 4】 基本計画(配置・動線・規模)策定
診療科の配置
手術室・ICU・ERの動線
病棟の構造
医療機器更新計画
新築か改修かの選択
特に医療動線(患者・スタッフ・物資)を最適化することが重要。
【STEP 5】 設計・工事発注方式の選定
設計監理方式
DB(設計施工一括)方式
など、組織と財源に応じて方式を決定。
【STEP 6】 実施設計・建築確認申請
医療機能を満たす具体的な図面を作成し、
建築基準法・消防法・医療法の整合性をチェック。
【STEP 7】 工事・竣工・移転
工事中も病院機能を停止できないことが多いため、
敷地内仮設や段階的建替えが採用されるケースが多い。
【STEP 8】 開院後の運営改善・モニタリング
医療機器更新計画・スタッフ動線の見直しなど、
長期的な施設運営を改善する。
5. 公的病院建替えで必ず検討すべき“5つの設計テーマ”
① BCP(災害時医療継続)
免震構造
非常用発電72時間対応
井水設備・エネルギーセンター
② 感染症対応
陰圧室
発熱外来動線
分離空調
③ スタッフ動線の合理化
医師不足・働き方改革に対応。
④ 医療DX
電子カルテ連携
ロボット搬送
物流システム最適化
⑤ 建て替えながらの病院運営
段階的建替えのための仮設計画の精度がプロジェクト成否を大きく左右。
6. 公的病院建替えの“よくある課題と失敗例”
❌ 地域医療構想との整合性を軽視
→ 病床削減や計画の大幅修正につながる
❌ 既存病院が稼働中で動線が確保できない
→ 仮設が膨らみ建設費が増加
❌ スタッフ意見の収集不足
→ 運用開始後に院内動線が合わず改修が必要
❌ コスト上昇リスクを織り込まない
→ 数十億円単位の予算超過に
❌ 医療機器更新のタイミングを誤る
→ 開院後、短期間で再投資が必要に
公的病院建替えは「医療・行政・建築」を統合するプロジェクト
公的病院の建替えは、
単なる建築計画ではなく、
地域医療提供体制の再構築そのものです。
そのため、
地域医療構想
行政協議
医療機能
BCP・感染症対応
財源計画
これらを総合的に統括できる体制が不可欠です。
当社では、
基本構想策定から設計調整、行政協議、コスト管理まで、
CM方式で公的病院建替えをトータル支援しています。
公的病院の建替え・再編をご検討中の自治体・医療法人の皆様は、
ぜひお気軽にご相談ください。


