【有料老人ホーム vs サ高住】建築基準はどう違う?失敗しない高齢者施設の計画ポイントを専門家が徹底解説
高齢化が加速する中で、
「有料老人ホーム」
「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」
の整備ニーズが全国的に拡大しています。
しかし、この2つは似ているようで、
法的分類・建築基準・設計要件が大きく異なるため、
建築計画の初期段階で誤ると、後戻りできない重大トラブルに繋がります。
本記事では、建設マネジメント(CM)の専門家視点から、
有料老人ホームとサ高住の違い、建築基準、設計・法令チェック、事業性への影響
を実務ベースで解説します。
1. 有料老人ホームとサ高住は何が違う?|法的位置づけから理解する
まず押さえるべきポイントは、
両者が全く異なる法制度で管理されているということ。
● 有料老人ホーム(介護保険施設ではない)
根拠法:老人福祉法
提供サービス:
生活支援
介護サービス(外部委託可能)
食事・見守り
特定施設入居者生活介護に指定されると、介護報酬を受けられる。
● サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
根拠法:高齢者住まい法
提供サービス:
安否確認(1日1回)
生活相談サービス
介護サービスは外部の事業所が提供する仕組み。
つまり、有料老人ホームは「施設」
サ高住は「住宅」という位置づけで、建築基準も大きく変わります。
2. 建築基準法から見る「構造・設備」の違い
2-1 構造基準の違い
◆ 有料老人ホーム
用途区分:「老人ホーム」→ 児童福祉施設等(建築基準法別表1・5項)
→ 不特定多数が利用する「施設」として扱われる。
特徴:
耐火構造の求められるケースが多い
避難経路・防火区画が厳格
自火報・スプリンクラー義務範囲が広い
介護動線を考慮した設計が必須
◆ サ高住
用途区分:「共同住宅」または「長屋」扱い(住居系)
→ 基本は住宅として扱われる。
特徴:
有料老人ホームより法規が緩やか
避難設備の基準が住宅寄り
水回り・居室の基準は住宅性能が基本
2-2 居室基準の違い
■ 有料老人ホーム(施設基準)
居室面積:原則10㎡以上
収納・採光・換気基準
トイレの有無は施設タイプによる
介護導線(スタッフ動線)の確保必須
■ サ高住(住宅基準)
居室面積:原則25㎡以上(浴室・トイレ含む)
→ 共用部充実型の場合は18㎡以上も可キッチン・浴室・トイレの専用設置が基本
プライバシー重視の個別設計
2-3 防火・避難設備の違い(最重要)
高齢者施設は避難が困難な利用者が多く、
防火計画は建物計画の核心です。
■ 有料老人ホーム
スプリンクラー:原則全館義務
自動火災報知設備:必須
避難経路幅:1.2m以上推奨
防火区画・延焼防止の要求強い
火災時の避難安全性を前提に設計する必要があります。
■ サ高住
共同住宅として扱われるため基準が緩い
スプリンクラーは延床面積により異なる
避難経路基準も住宅に準じる
高齢者利用を想定し設計強化するケースが多い
3. 運営面の違いが“建築計画”に与える影響
運営形態の違いは、建物設計に直結します。
● 有料老人ホーム
食堂・機能訓練室・事務室など共用部が大きい
介護スタッフの詰所と動線計画が必要
ナースコールシステムの整備
介護設備(特殊浴槽・リフトなど)導入が前提
→ 建築費(坪単価)はサ高住より高くなる傾向
● サ高住
基本は居住用のため、個室中心
サービス提供スペースは最小限
共用部は有料老人ホームより小規模
外部サービス(訪問介護)を前提に計画
→ 居住性重視の設計が求められ、坪単価は施設系より低め
4. 事業者が誤りやすい“用途変更”の落とし穴
特に多いのが以下のケース。
❌ 住宅物件をそのまま有料老人ホームに変えようとする
→ 防火・避難・スプリンクラー基準を満たせず許可が下りない
❌ サ高住で18㎡以下の居室を計画
→ 補助金対象外になり事業性が悪化
❌ 有料老人ホームなのに住宅扱いで設計
→ 消防署の検査で不適合 → 大規模な再工事に
❌ 運営モデルと建築計画が一致しない
→ 食堂サイズやスタッフ動線が合わず改修が必要に
5. どちらを建てるべき?事業性の観点から比較
◆ 有料老人ホーム向け
✔ 介護度が高い利用者の受入
✔ 介護報酬の安定収入
✔ 施設型サービスを地域に提供
✔ 看取り対応まで担うケースも
◆ サ高住向け
✔ 初期投資を抑えたい
✔ 居住系サービスで地域需要に対応
✔ 自立〜軽介護の高齢者向け
✔ 医療・介護事業者との連携で事業拡大可能
6. 設計の段階から押さえるべき“建築基準チェック”
用途地域の確認(住居系・商業系)
避難階段の位置
防火区画の計画
共用部の面積比
居室面積・設備基準
スプリンクラー要否
断熱・省エネ性能(ZEB化検討)
初期段階での法規チェックと行政協議が最重要。
有料老人ホームとサ高住は“用途・法規・建築”の違いを理解して計画すべき
有料老人ホームとサ高住は、
名称が似ていても、建築基準・法的位置付け・設備要件・運営モデルが全く異なります。
◆ 有料老人ホーム
→ 施設系。防火・避難・介護設備の基準が厳しい。
◆ サ高住
→ 住宅系。居住性が重視され、建築基準は緩やか。
建設計画では、法規(建築基準法・老人福祉法・高齢者住まい法)
× 設計条件
× 運営モデル
× 補助金制度
の整合性が最も重要です。
当社では、高齢者施設の法規確認、行政協議、用途変更、設計調整、建設コスト最適化をCM方式で総合サポートしています。
施設建設をご検討中の事業者様は、ぜひお気軽にご相談ください。


