ホテルの階高と天井高の関係 ― 発注者が混同しやすいポイントを実務視点で整理 ―

ホテル建設を検討する際、発注者から多く聞かれる質問のひとつに「天井高はどのくらい確保できますか」というものがあります。

一見すると単純な質問に見えますが、実務の現場では「階高」と「天井高」が混同された状態で検討が進んでいるケースが少なくありません。この認識のズレは、設計途中での修正や建設費の増加につながることもあるため、計画初期の段階で正しく整理しておくことが重要です。

本記事では、ホテル建設における階高と天井高の違いと関係性について、建設マネジメントの実務視点から解説します。

階高と天井高はまったく異なる概念

まず基本的な定義を整理します。階高とは、下階の床仕上げ面から上階の床仕上げ面までの高さを指し、建物の構造的な高さを表す指標です。

一方で天井高とは、室内の床仕上げ面から天井仕上げ面までの高さであり、利用者が実際に体感する空間の高さを意味します。

つまり、

  • 階高:構造・設備・床・天井をすべて含んだ全体寸法

  • 天井高:そのうち、室内空間として使える有効高さ

という関係にあります。

この違いを理解しないまま計画を進めると、「階高は十分にあるのに、完成すると天井が低く感じる」といった問題が生じやすくなります。

階高が確保されていても天井高が低くなる理由

ホテル建築では、階高の中に多くの要素を収める必要があります。

一般的な客室階では、

  • 梁(構造体)

  • 空調ダクト

  • 給排水配管

  • 電気・通信配線

  • スプリンクラー配管

  • 二重天井スペース

といった設備・構造要素が必要不可欠です。

これらは法規制や快適性、維持管理の観点から省略できないため、階高が確保されていても、その分すべてを天井高に使えるわけではありません。結果として、発注者が想定していた天井高よりも低くなるケースが見られます。

ホテル用途が特に天井高の影響を受けやすい理由

ホテルは、オフィスビルや住宅と比べて設備密度が高い用途に分類されます。

客室ごとの空調制御や給排水系統、防災設備や排煙計画などが細かく設定されるため、設備スペースが階高の中で占める割合が大きくなりがちです。その結果、同じ階高であってもオフィス用途と比べて天井高が低くなる傾向が見られる場合があります。

発注者が混同しやすい代表的なポイント

① 「天井高○○m」という要望の解釈

発注者が希望する天井高が、「仕上げ後の有効天井高」なのか、「構造的に確保したい高さ」なのかを明確にしないと、設計者との認識にズレが生じます。

② 階高のみでボリュームを判断してしまう

既存建物の資料や不動産情報から階高だけを確認し、「問題ない」と判断してしまうケースもありますが、用途がホテルに変わる場合、同じ条件が適用できないことも少なくありません。

③ 客室と共用部を同じ基準で考える

ロビーやレストランと客室では、天井高に求められる役割や意味が異なります。すべてを同一基準で判断すると、コストや空間品質のバランスが崩れることがあります。

 

天井高を高くすれば良いという単純な話ではない

天井高を高くすれば、開放感や空間の質は向上します。
しかしその一方で、

  • 階高増加による構造コストの上昇

  • 外装面積増加による建設費の増加

  • 設備容量の拡大

  • 建物高さ増加に伴う法規制への影響

といった点も同時に発生します。天井高はデザイン要素であると同時に、コストや法規制と密接に関係する要素であることを理解する必要があります。

CM視点での整理が重要な理由

建設マネジメントの立場では、階高と天井高を個別に検討するのではなく、

  • 想定する宿泊者層

  • ホテルのグレード

  • 運営方針

  • 建設コストと事業性

を総合的に整理したうえで、適切な階高・天井高を設定することが重要だと考えます。初期段階でこの整理ができていないと、設計途中での修正や計画変更が発生しやすくなります。

数値ではなく関係性を理解する

ホテル建設において、階高と天井高は単なる数値の問題ではありません。

  • 階高は構造・設備を含む前提条件

  • 天井高はその結果として生まれる空間品質

という関係を正しく理解することが、計画をスムーズに進めるための第一歩となります。発注者がこの関係性を把握したうえで計画を進めることが、設計変更やコスト増加を防ぐための現実的な方法と言えるでしょう。

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