住居系用途地域ごとの「できる施設・できない施設」整理
― 商業施設・ホテル・オフィス・医療施設計画で誤解されやすい法的整理 ―
建築計画を検討する際、用途地域の確認は最初に行うべき基本事項です。
しかし実務では、「住居系用途地域でも条件を整えれば商業施設や医療施設が計画できるのではないか」といった誤解が原因で、計画途中で大幅な修正を余儀なくされるケースが少なくありません。
特に商業施設、ホテル、オフィスビル、病院といった非住宅用途は、住居系用途地域では建築基準法上の整理が明確に分かれており、事前理解が不足したまま計画を進めることは大きなリスクとなります。
本記事では、建築基準法別表第二の規定を前提として、住居系用途地域ごとに建築可能な施設の範囲を整理し、発注者が初期段階で判断すべきポイントを解説します。
住居系用途地域に共通する前提
住居系用途地域は、都市計画上「居住環境の保護」を目的として指定されています。そのため、不特定多数の利用を前提とする用途や、集客性の高い施設は、原則として建築基準法別表第二に明示された範囲内でのみ認められます。
ここで重要なのは、「行政判断で何とかなるか」ではなく、「用途地域として制度上想定されているか」という視点です。
第一種・第二種中高層住居専用地域における医療施設の扱い
第一種および第二種中高層住居専用地域では、低層住居専用地域に比べて建築可能な用途は拡大します。
しかし、病院については建築基準法別表第二において、原則として建築可能用途には含まれていません。
ここで注意すべき点として、「行政判断を前提に病院計画を検討する」という考え方は、法制度上の整理として適切ではありません。
中高層住居専用地域で想定されている医療用途は、
病床を有しない診療所
に限られており、入院施設を有する病院は用途地域の想定外となります。したがって、病院建設を前提とする場合は、用途地域の選定そのものを見直す必要があります。
住居地域・準住居地域におけるホテル・商業用途
第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域では、住宅以外の用途も一定程度想定されています。ただし、ホテル・旅館については用途地域ごとに取り扱いが異なり、すべての住居系用途地域で一律に建築可能とされているわけではありません。
例えば、
第一種・第二種住居地域では、用途地域の趣旨に照らし、規模・用途内容が確認対象となる
準住居地域では、幹線道路沿いの立地を前提として、宿泊施設が想定されるケースがある
というように、用途地域ごとに制度上の前提が異なります。「条件付きで可能」といった曖昧な理解ではなく、別表第二に基づく用途区分の確認が不可欠です。
発注者が初期段階で確認すべき視点
住居系用途地域で非住宅用途を計画する場合、発注者は次の点を必ず整理する必要があります。
建築基準法別表第二に用途が明示されているか
用途・規模が条文上の範囲に収まっているか
将来的な用途変更や事業拡張が制度上可能か
これらを設計開始前に確認しないまま進めた計画は、確認申請や行政協議の段階で成立しなくなるリスクが高くなります。
住居系用途地域は「解釈」ではなく「条文」で判断する
住居系用途地域における建築可否は、事例や感覚ではなく、建築基準法別表第二の記載内容が判断基準となります。
商業施設、ホテル、オフィス、病院といった用途は、住居系用途地域では原則的に抑制される前提にあることを理解し、企画段階で用途地域と事業計画を適合させることが不可欠です。発注者に求められるのは、「できるかどうかを相談すること」ではなく、制度上成立する計画かどうかを見極めた上で土地と用途を選択することです。


