医療施設に向く用途地域の選び方 ― 病院・診療所・医療モール計画で最初に整理すべき法的前提 ―
医療施設の新築や建替え、既存建物の転用を検討する際、事業計画や収支以前に必ず整理すべきなのが「用途地域の選定」です。
医療施設は公共性が高い一方で、不特定多数の利用、救急対応、夜間稼働などを伴うため、用途地域によっては建築基準法上、明確に制限されています。この前提を理解しないまま計画を進めると、設計段階や確認申請段階で計画そのものが成立しなくなるケースも少なくありません。
本記事では、建築基準法別表第二の整理を前提に、医療施設に適した用途地域の考え方を建設マネジメントの実務視点から解説します。
医療施設計画で最初に区別すべき「施設の種類」
用途地域を検討する前に、医療施設は大きく次の2つに分けて考える必要があります。
病院:入院施設(病床)を有する医療施設
診療所:病床を有しない、または外来診療を中心とする医療施設
この区分は、建築基準法別表第二における用途の扱いに直結します。「医療施設」という言葉で一括りにせず、どの類型の医療施設かを明確にすることが用途地域選定の出発点となります。
住居専用地域が医療施設に不向きな理由
第一種・第二種低層住居専用地域では、建築可能な用途は住宅を中心に限定されており、建築基準法別表第二において、病院は想定されていません。また、第一種・第二種中高層住居専用地域においても、病院は建築可能用途として列挙されていません。
これらの地域で認められている医療用途は、
病床を有しない診療所
に限られます。したがって、入院機能を前提とした病院計画については、住居専用地域を選定すること自体が制度上適切ではありません。
医療施設に適した用途地域①|近隣商業地域
近隣商業地域は、「周辺住民の日常生活に必要な商業・業務機能」を想定した用途地域です。
このため、
診療所
一定規模の医療関連施設
が、建築基準法別表第二上、制度的に想定されている用途となります。特に外来診療を中心とした医療施設や、複数の診療科が入居する医療モールは、近隣商業地域との相性が良いといえます。
医療施設に適した用途地域②|商業地域
商業地域は、用途制限が最も緩やかな地域であり、病院・診療所ともに建築可能な用途として整理されています。
入院機能を有する病院
大規模な医療施設
医療・商業の複合施設
といった計画を検討する場合、用途地域上の制約が最も少ない選択肢となります。
ただし、用途制限が緩やかな一方で、
容積率・建ぺい率の最大活用
防災・避難計画
交通処理計画
といった別の技術的検討が重要になります。
準工業地域・工業地域との関係
準工業地域では、工業系用途と生活関連用途の混在が想定されており、医療施設が検討対象となるケースもあります。
ただし、
周辺環境との調和
騒音・振動との関係
患者動線・安全性
といった観点から、医療施設の立地として適しているかは慎重な検討が必要です。用途地域上可能であっても、医療施設としての機能や運営に支障が出ないかを、企画段階で整理することが求められます。
医療施設向け用途地域選定で発注者が確認すべきポイント
医療施設計画では、用途地域について次の点を必ず確認する必要があります。
病院か診療所か、施設区分が明確になっているか
建築基準法別表第二で用途が想定されている地域か
将来的な増床・用途拡張が制度上可能か
周辺用途との関係性が事業計画に影響しないか
これらを設計前に整理せず進めた計画は、確認申請段階で成立しない、または大幅な計画修正を迫られるリスクが高くなります。
医療施設は「立地選び」が事業成立を左右する
医療施設は、建築計画の巧拙以前に、用途地域の選定が事業成立の前提条件となります。病院と診療所では、建築可能な用途地域が明確に異なり、住居専用地域では制度上成立しない計画も少なくありません。
医療施設を成功させるためには、
-
法令上の用途区分
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将来の事業展開
を初期段階で一体的に整理することが不可欠です。
建築計画に着手する前に、「この土地で医療施設が制度上成立するのか」を確認することが、計画を止めないための最も重要な第一歩といえるでしょう。


