木造オフィス・S造オフィス・RC造オフィスの違いと建設費|構造選びで失敗しないポイント

オフィスビルや本社社屋を新築する際、最初に検討すべき重要な項目のひとつが「構造」です。

同じオフィスでも、木造、S造、RC造のどれを選ぶかによって、建設費、工期、耐久性、デザイン性、将来のレイアウト変更、維持管理コストが大きく変わります。

特に近年は、建設費の高騰、働き方の変化、環境配慮、企業ブランディング、ZEB対応、BCP対策など、オフィスに求められる条件が多様化しています。そのため、「どの構造が一番安いか」だけで判断するのではなく、建物の用途、規模、敷地条件、将来計画まで含めて比較することが重要です。

本記事では、発注者向けに、木造オフィス、S造オフィス、RC造オフィスの違いと建設費の考え方をわかりやすく解説します。

まず結論|構造選びに絶対的な正解はない

木造、S造、RC造にはそれぞれメリットと注意点があります。

一般的には、低層で小規模なオフィスでは木造が検討しやすく、中規模以上のオフィスや自由度の高い空間を求める場合はS造、耐久性・遮音性・重厚感を重視する場合はRC造が選ばれやすい傾向があります。

ただし、建設費は構造だけで決まるものではありません。敷地条件、地盤、階数、延床面積、外装仕様、設備グレード、内装仕様、耐火性能、地域の施工体制によって大きく変わります。

特に木造オフィスは、低層・一般的な仕様であればコストを抑えやすい場合がありますが、大規模木造、耐火木造、特殊な木質デザインを採用する場合は、S造やRC造より高くなることもあります。

つまり、構造選びでは「木造だから安い」「RC造だから高い」と単純に判断するのではなく、計画条件に合わせて総合的に比較することが大切です。

木造・S造・RC造の比較表

項目木造オフィスS造オフィスRC造オフィス
主な構造木材、集成材、CLTなど鉄骨鉄筋コンクリート
向いている規模低層、小〜中規模中〜大規模中〜大規模、都市型
建設費の傾向低層では抑えやすいバランスが良い高くなりやすい
工期比較的短い場合がある比較的短い長くなりやすい
デザイン性木質感、温かみが出しやすい大空間を作りやすい重厚感、高級感を出しやすい
耐火性設計条件により注意が必要耐火被覆が必要になる場合あり高い
遮音性注意が必要中程度高い
レイアウト自由度規模により制約あり高い高いが壁式の場合は制約あり
維持管理木部の管理が重要錆・耐火被覆の管理が重要外壁・防水・ひび割れ管理が重要

木造オフィスの特徴

木造オフィスは、木材を主要な構造部材として使うオフィスです。近年は、環境配慮や企業ブランディングの観点から、木造や木質化を取り入れたオフィスへの関心が高まっています。

木造オフィスの最大の魅力は、木の温かみを活かした空間づくりができることです。無機質になりやすいオフィス空間に木材を取り入れることで、柔らかく落ち着いた雰囲気を演出できます。来客スペース、社員食堂、共用ラウンジ、エントランスなどに木質感を出すことで、企業の姿勢やブランドイメージを伝えやすくなります。

また、木造は建物の重量が比較的軽いため、敷地条件や地盤条件によっては基礎工事の負担を抑えられる場合があります。低層オフィスや地方の本社社屋、小規模な事務所、ショールーム併設オフィスなどでは、有力な選択肢になります。

一方で、木造オフィスには注意点もあります。規模が大きくなる場合、防火・耐火性能、構造計画、遮音性、振動、メンテナンス、施工会社の対応力を慎重に確認する必要があります。

特に都市部や防火地域で木造オフィスを計画する場合、耐火建築物や準耐火建築物としての設計が必要になることがあります。その場合、構造部材をそのまま見せることが難しくなったり、特殊な部材や工法が必要になったりするため、建設費が上がる可能性があります。

木造オフィスは、単に「安く建てるための構造」ではありません。木の質感、環境配慮、企業イメージ、社員の働きやすさを重視する場合に、価値を発揮しやすい構造です。

木造オフィスが向いているケース

木造オフィスは、以下のような計画に向いています。

計画内容理由
1〜3階建て程度の本社社屋低層で木造のメリットを活かしやすい
地方都市や郊外のオフィス敷地に余裕があり計画しやすい
ショールーム併設オフィス木質感による空間演出がしやすい
環境配慮を打ち出したい企業SDGsや脱炭素のメッセージを伝えやすい
社員の働きやすさを重視する会社温かみのある空間づくりに向いている

S造オフィスの特徴

S造とは、鉄骨造のことです。柱や梁に鉄骨を使用する構造で、オフィスビルでは非常に多く採用されています。

S造オフィスの特徴は、構造計画の自由度が高く、比較的大きな空間をつくりやすいことです。柱の少ない執務スペース、将来のレイアウト変更、テナント対応、会議室や倉庫の配置変更など、オフィスに求められる柔軟性と相性が良い構造です。

また、RC造と比べると建物重量が軽く、工期も短くしやすい傾向があります。中規模オフィス、事務所兼倉庫、ロードサイド型の事業所、テナントビル、本社ビルなど、幅広い用途に対応できます。

建設費の面では、S造は木造とRC造の中間的な位置づけになることが多く、コストと自由度のバランスが良い構造といえます。

ただし、S造も万能ではありません。鉄骨価格の変動、耐火被覆、外装仕様、断熱性能、防錆対策、遮音性、振動対策によって建設費が変わります。特にオフィスの場合、構造体だけでなく、空調、電気、通信、照明、セキュリティ、非常用設備などの設備費が大きくなるため、建物全体の予算管理が重要です。

S造オフィスは、「建設費を抑えながら、広い空間とレイアウト自由度を確保したい」発注者に向いています。

S造オフィスが向いているケース

計画内容理由
2〜5階建て程度のオフィスコストと構造自由度のバランスが良い
テナントオフィス将来の区画変更に対応しやすい
事務所兼倉庫大空間を作りやすい
ロードサイド型の事業所工期やコストを調整しやすい
本社ビルデザインと実用性を両立しやすい

RC造オフィスの特徴

RC造とは、鉄筋コンクリート造のことです。鉄筋とコンクリートを組み合わせた構造で、耐火性、遮音性、耐久性、重厚感に優れています。

RC造オフィスの大きなメリットは、建物としての安定感と高級感です。外観に重厚感を出しやすく、遮音性も高いため、役員室、会議室、研究施設、クリニック併設オフィス、都市型の本社ビルなどに適しています。

また、耐火性や耐久性を重視する場合にもRC造は有力な選択肢です。長期保有を前提とした自社ビルや、資産価値を重視する建物では、RC造が選ばれることがあります。

一方で、RC造は建設費が高くなりやすく、工期も長くなる傾向があります。鉄筋工事、型枠工事、コンクリート打設、養生期間などが必要になるため、S造よりも工程が複雑になります。また、建物重量が大きいため、地盤や基礎工事のコストにも注意が必要です。

RC造は、短期的な建設費だけを見ると高く感じられる場合があります。しかし、耐久性、遮音性、資産性、長期利用を考えると、計画によっては合理的な選択になることもあります。

RC造オフィスが向いているケース

計画内容理由
都市部の本社ビル重厚感と耐久性を出しやすい
長期保有を前提とした自社ビル資産性を重視しやすい
遮音性が必要なオフィス会議室や役員室と相性が良い
研究施設・医療系施設併設安定性と設備対応がしやすい
高級感のある外観を求める建物コンクリートの質感を活かせる

建設費の考え方|構造だけで坪単価は決まらない

オフィスの建設費を比較するとき、多くの発注者が気にするのが「坪単価」です。

しかし、坪単価だけで木造、S造、RC造を比較するのは危険です。なぜなら、建設費は構造だけでなく、さまざまな条件によって変わるからです。

主な要因は以下の通りです。

建設費を左右する要素内容
延床面積面積が大きいほど総額は上がるが、坪単価は下がる場合もある
階数階数が増えると構造・避難・設備条件が変わる
地盤条件杭工事や地盤改良の有無で大きく変わる
用途地域・防火地域耐火性能や外装仕様に影響する
外装仕様カーテンウォール、タイル、金属パネルなどで差が出る
設備グレード空調、電気、通信、セキュリティで差が出る
内装仕様執務室、会議室、受付、ラウンジの仕様で変わる
環境性能ZEB、断熱、太陽光、省エネ設備で変わる
工期短工期を求めるとコストが上がる場合がある
施工地域地域の職人不足や資材調達で差が出る

特にオフィスの場合、構造体の費用だけでなく、電気設備、空調設備、通信設備、照明計画、セキュリティ、内装工事の割合が大きくなります。

そのため、構造を比較するときは、建物本体だけでなく、設備費、外構費、設計費、申請費、予備費まで含めた総事業費で判断することが重要です。

 

建設費のイメージ

一般的な低層オフィスで比較すると、建設費の傾向は以下のように考えられます。

 
低層・一般仕様の場合
木造 < S造 < RC造
 

ただし、これはあくまで一般的な傾向です。

以下のような場合は、木造でも建設費が高くなることがあります。

  • 耐火木造が必要になる場合
  • 大規模木造や中高層木造を採用する場合
  • 木材を「あらわし」で見せる特殊設計を行う場合
  • 大断面集成材やCLTを使用する場合
  • 防火地域で厳しい性能が求められる場合
  • 木質デザインにこだわった内装を採用する場合

一方で、S造やRC造でも、仕様を整理し、構造計画を合理化し、設備計画を適切に行うことで、コストを抑えられる場合があります。

つまり、建設費を抑えるためには、構造種別を選ぶだけでなく、初期段階で設計条件を整理し、過剰な仕様を避け、複数案を比較することが重要です。

発注者が比較すべきポイント

構造を選ぶ際、発注者は以下の項目を比較することをおすすめします。

比較項目確認する内容
建設費本体工事、設備工事、外構、設計費を含めて比較する
工期企画、設計、申請、施工までの期間を確認する
将来の変更レイアウト変更や増築に対応できるか
維持管理外壁、防水、構造部材、設備更新のしやすさ
耐火性用途地域や防火地域に適合するか
遮音性会議室、役員室、執務室に必要な性能を満たすか
デザイン企業ブランドや来客対応に合うか
環境性能木材利用、省エネ、ZEB対応をどう考えるか
資産性将来の売却・賃貸・長期保有に向いているか

構造選びでよくある失敗

1. 坪単価だけで判断してしまう

最も多い失敗は、坪単価だけを見て構造を決めてしまうことです。

たとえば、木造が安いと思って計画を進めたものの、耐火性能や特殊部材が必要になり、結果的にS造と同程度の費用になるケースがあります。

反対に、RC造は高いと思って避けたものの、長期利用や遮音性、資産性を考えるとRC造の方が合理的だったというケースもあります。

2. 初期段階で設備計画を見ていない

オフィスでは、空調、電気、照明、通信、防災、セキュリティの計画が非常に重要です。

構造だけを先に決めても、後から設備スペースが不足したり、天井高さが足りなかったり、空調方式を変更する必要が出たりすることがあります。

特に、サーバールーム、会議室、受付、社員食堂、ショールーム、研究室などを設ける場合は、初期段階から設備条件を整理する必要があります。

3. 将来のレイアウト変更を考えていない

オフィスは、会社の成長や働き方の変化に合わせて使い方が変わります。

将来、部署変更、増員、フリーアドレス化、テナント貸し、会議室増設などを行う可能性がある場合は、柱の位置、設備ルート、床荷重、間仕切り変更のしやすさを考えておく必要があります。

構造選びは、完成時だけでなく、10年後、20年後の使い方まで見据えて判断することが大切です。

どの構造を選ぶべきか?

発注者向けに、構造選びの目安を整理すると以下のようになります。

重視すること向いている構造
初期費用を抑えたい木造、S造
工期を短くしたい木造、S造
大空間を作りたいS造
重厚感を出したいRC造
遮音性を重視したいRC造
環境配慮を打ち出したい木造、木質化
将来のレイアウト変更を重視したいS造
長期保有・資産性を重視したいRC造、S造
企業ブランディングを重視したい木造、RC造、S造いずれも可

大切なのは、最初からひとつの構造に決め打ちしないことです。

計画初期では、木造案、S造案、RC造案を比較し、建設費、工期、法規、デザイン、維持管理、将来性を総合的に検討することが理想です。

発注前に確認したい質問リスト

設計者や施工会社へ相談する前に、発注者は以下の質問を整理しておくと、構造比較がしやすくなります。

質問確認する目的
建物は何年使用する予定か?長期保有か短期利用かを判断する
将来、増築や用途変更の可能性はあるか?構造と設備計画に影響する
来客に見せる空間を重視するか?デザイン性や木質化の必要性を確認する
どの程度の遮音性が必要か?会議室や役員室の仕様に影響する
工期に制限はあるか?構造選定と発注方式に影響する
予算の上限はいくらか?概算段階で比較しやすくする
ZEBや省エネ対応を行うか?設備費・外皮性能に影響する
防火地域・準防火地域か?耐火性能とコストに影響する
地盤条件に不安はあるか?基礎工事費に影響する
将来テナント貸しする可能性はあるか?レイアウト自由度と設備区画に影響する

オフィスの構造は「建設費」だけでなく「使い方」で選ぶ

木造オフィス、S造オフィス、RC造オフィスには、それぞれ異なる特徴があります。

木造オフィスは、低層の本社社屋や環境配慮型オフィスに向いており、木の温かみや企業ブランディングを表現しやすい構造です。

S造オフィスは、コスト、工期、空間自由度のバランスが良く、中規模オフィスやテナント対応型の建物に向いています。

RC造オフィスは、耐久性、遮音性、重厚感に優れており、長期保有を前提とした都市型オフィスや高級感のある本社ビルに向いています。

ただし、建設費は構造だけで決まるものではありません。敷地条件、地盤、階数、設備、外装、内装、法規、工期、地域の施工体制によって大きく変わります。発注者として重要なのは、初期段階で複数の構造案を比較し、建設費だけでなく、工期、維持管理、将来の使い方、企業イメージまで含めて判断することです。

【重要事項】本記事は木造・S造・RC造オフィスの構造選定および建設費に関する一般的な考え方を整理したものであり、特定案件の建設費や性能を保証するものではありません。実際の建設費・工期・法規適用は、敷地条件・規模・仕様・用途地域・施工条件・市況等により大きく異なります。具体的な計画にあたっては、設計者・施工会社・専門家と協議の上、個別条件に基づいて判断してください。

 

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