病院と何が違う?有床診療所の構造と設備基準をわかりやすく解説
近年、地域医療の担い手として再注目されているのが「有床診療所(ゆうしょうしんりょうじょ)」です。特に高齢化の進む地方都市では、在宅医療のサポートや軽度入院の受け皿として、その存在価値が高まっています。
一方で、有床診療所と病院の違いが曖昧なまま設計や運営を進めると、法令違反や追加費用の原因になりかねません。本記事では、有床診療所の構造・設備に関する法的基準を、病院との違いを中心にわかりやすく整理します。
✅ 建築基準法における構造基準の違い
◉ 用途区分と建築物の種別
病院と有床診療所は、どちらも「特殊建築物」に分類されますが、病床の有無によって設計義務が変わります。
無床診療所(外来のみ):診療所扱い。建物用途は「診療所」。
有床診療所(入院あり):一部地域では「病院」と同等の規制が適用されるケースあり。
特に注意すべきは、病床数や延床面積によってスプリンクラーの設置義務、構造区画、防火区画の考え方が異なる点です。
◉ 耐火建築物の要件
以下の条件に該当する場合は、耐火建築物としての要件を満たす必要があります。
地上3階以上で延床500㎡超
特定用途(病室・診療所)部分が2階以上にある
これは病院だけでなく有床診療所にも適用されるため、構造種別(鉄骨造・RC造)を選定する際の重要なポイントになります。
✅ 消防法における設備基準の違い
◉ 自動火災報知設備
病院も有床診療所も、入院設備を有するため、火災時の避難遅延リスクが高い建物として扱われます。そのため、以下の設備が求められます。
自動火災報知設備(病床数・延床面積により義務)
非常照明設備
誘導灯・誘導標識
消火器具および屋内消火栓設備(一定規模以上)
◉ スプリンクラー設備の設置義務
病床が10床以上または延床面積が一定以上の場合、スプリンクラー設置が義務化される可能性が高いです。とくに高齢者を対象とする診療所や療養施設を兼ねる場合には、基準が厳しくなる傾向があります。
✅ 医療施設ならではの内装・空調設備の考慮点
病院と比較した場合、有床診療所でも以下のような設計配慮が求められます。
感染症対策としての動線分離(職員/患者)
陰圧・陽圧制御が可能な病室・処置室の設計
患者のプライバシーを確保する個室化設計
ナースステーションから病室を見渡せる視認性の確保
医療ガス設備(酸素・吸引)の配管計画
また、内装仕上げ材には、耐薬品性・防汚性・抗菌性が求められるため、一般的なテナント設計とは大きく異なる材料選定が必要です。
「病院並み」の基準を意識した設計が有床診療所成功のカギ
有床診療所は、法的には病院とは異なるものの、建築・消防・医療設備面では多くの点で共通の厳しい基準が存在します。「クリニックの延長」という感覚で設計を始めてしまうと、後々の設計変更や費用増加に直結する恐れがあります。
事業計画段階から病院並みの構造・設備基準を意識した設計戦略を立てることが、有床診療所の成功に欠かせない第一歩です。


