自社ビル・オフィスビル建設ガイド|費用・設計・ZEB・建て替え・改修の進め方

自社ビルやオフィスビルの建設は、単に建物を新築するだけのプロジェクトではありません。

建設費、設計方針、働き方、将来の増員、ZEB・省エネ対応、BCP、設備計画、施工会社選定、既存ビルの建て替え・改修判断など、発注者が検討すべき項目は多岐にわたります。

特に近年は、建設費の高騰、省エネ基準への対応、働き方の変化、災害対策、老朽化ビルの再活用などにより、オフィスビルに求められる条件が大きく変わっています。

自社ビルを建てる場合も、賃貸オフィスビルを新築する場合も、重要なのは「どのような建物を建てるか」だけではありません。なぜ建てるのか、誰が使うのか、どのくらいの期間使うのか、将来どのように変化する可能性があるのかを初期段階で整理することが大切です。

本記事では、自社ビル・オフィスビルの建設を検討する発注者向けに、費用、設計、ZEB、建て替え、改修、発注方式の基本的な考え方を解説します。

自社ビル・オフィスビル建設で最初に決めるべきこと

自社ビルやオフィスビルを計画する際、最初に決めるべきなのは建物のデザインではありません。まずは、建設目的と事業方針を整理する必要があります。

確認項目内容
建設目的自社利用、賃貸、複合用途、建て替え、資産活用
利用者社員、テナント、来客、地域利用者
使用期間短期利用か、20〜30年以上の長期利用か
必要面積現在の社員数、将来の増員、共用部、倉庫
必要機能受付、会議室、執務室、役員室、サーバールーム、休憩室
予算建築工事費だけでなく、設計費、外構、什器、予備費を含む
工期いつまでに竣工・移転・運用開始したいか
将来対応増築、用途変更、テナント貸し、設備更新の可能性

初期段階でこれらを整理しないまま設計を進めると、後から面積不足、設備容量不足、予算超過、設計変更が発生しやすくなります。

自社ビルと賃貸オフィスビルの違い

同じオフィスビルでも、自社利用を目的とする場合と、テナント貸しを前提とする場合では、計画の考え方が異なります。

項目自社ビル賃貸オフィスビル
主な目的自社の業務効率、ブランド、資産形成賃貸収益、入居率、資産価値
空間計画自社の働き方に合わせやすいテナントの汎用性が重要
設備計画自社用途に最適化しやすい区画変更やテナント入替に対応
投資判断長期利用・企業価値を重視収益性・利回りを重視
将来対応増員、部署変更、BCP対応空室対策、用途変更、設備更新

自社ビルでは、企業の働き方やブランドイメージを反映しやすい一方で、建物所有者として維持管理や修繕責任も発生します。

賃貸オフィスビルでは、テナントが入れ替わることを前提に、平面計画、設備容量、共用部、セキュリティ、管理しやすさを考える必要があります。

建設費の考え方|坪単価だけで判断しない

自社ビル・オフィスビル建設で最も関心が高いのが建設費です。ただし、建設費は坪単価だけで判断できません。同じ延床面積でも、構造、階数、外装、設備、ZEB対応、地盤、地域、工期によって大きく変わります。

費用項目内容
建築工事費基礎、躯体、屋根、外壁、内装、建具
設備工事費空調、電気、給排水、消防、通信、セキュリティ
外構工事費駐車場、舗装、植栽、外灯、看板
設計・監理費基本設計、実施設計、工事監理
申請費建築確認、省エネ適合性審査、消防協議など
什器・備品費デスク、椅子、収納、会議室家具、サイン
IT・通信費LAN、Wi-Fi、サーバールーム、入退室管理
予備費物価変動、設計変更、想定外工事への備え

特にオフィスビルでは、空調、電気、通信、照明、セキュリティなどの設備工事費が大きくなりやすい傾向があります。

建設費を検討する際は、建築本体工事だけでなく、設計費、外構、什器、移転費、予備費まで含めた総事業費で確認することが重要です。

建設費が上がりやすい要因

自社ビル・オフィスビルの建設費は、以下の条件で上がりやすくなります。

条件費用が上がりやすい理由
地盤が弱い杭工事や地盤改良が必要になる
階数が多い構造、避難、設備条件が複雑になる
外装グレードが高いガラス、金属パネル、タイルなどで費用が変わる
ZEB対応を行う断熱、空調、照明、BEMS、太陽光の検討が必要
サーバールームを設ける電気容量、空調、セキュリティが必要
短工期を求める人員増、工程調整、夜間・休日対応が必要になる
都市部の狭小地搬入、仮設、近隣対応に制約が出る
将来対応を多く盛り込む予備配管、増設対応、設備容量の確保が必要

初期段階では、すべての要望を盛り込むのではなく、優先順位を整理することが大切です。

構造選定|木造・S造・RC造の違い

オフィスビルでは、構造選定も重要です。木造、S造、RC造では、建設費、工期、耐久性、デザイン、将来のレイアウト変更のしやすさが異なります。

構造特徴向いているケース
木造温かみ、環境配慮、低層建物と相性がよい低層本社、郊外オフィス、環境配慮型施設
S造大空間、工期、コストバランスに優れる中規模オフィス、テナントビル、事務所兼倉庫
RC造耐久性、遮音性、重厚感に優れる都市型本社ビル、長期保有、重厚感を重視する建物

構造は建設費だけで決めるものではありません。将来のレイアウト変更、設備更新、耐火性能、敷地条件、建物の使い方を含めて比較する必要があります。

設計で確認すべきポイント

オフィスビルの設計では、見た目のデザインだけでなく、業務効率、設備、維持管理、将来変更への対応が重要です。

設計項目確認内容
受付・エントランス企業イメージ、来客動線、セキュリティ
執務スペース固定席、フリーアドレス、将来の増員
会議室小会議室、大会議室、Web会議対応
サーバールーム電源、空調、セキュリティ、通信回線
休憩室・ラウンジ社員満足度、福利厚生、採用ブランディング
倉庫・書庫書類、備品、防災用品の保管
トイレ・更衣室利用人数、バリアフリー、清掃性
駐車場・駐輪場社員、来客、搬入車両への対応

オフィスは完成時だけでなく、10年後、20年後にも使い方が変わる可能性があります。

部署変更、増員、テナント貸し、Web会議の増加、フリーアドレス化などを想定し、柔軟性のある計画にすることが重要です。

ZEB・省エネ対応の考え方

近年、自社ビル・オフィスビルではZEBや省エネ性能への関心が高まっています。2025年4月以降は、原則として全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準への適合が義務付けられています。オフィスビルの新築でも、建築確認申請時に省エネ基準への適合性を確認する必要があります。

ZEBには、『ZEB』、Nearly ZEB、ZEB Ready、ZEB Orientedなどの段階があります。

『ZEB』は、年間の一次エネルギー消費量の収支を正味ゼロまたはマイナスにすることを目指す水準です。Nearly ZEBは、『ZEB』に限りなく近い建物として、省エネと創エネにより一次エネルギー消費量を大きく削減する水準です。ZEB Readyは、創エネを除き、省エネによって基準一次エネルギー消費量から50%以上の削減を目指す水準です。

ZEB Orientedは、主に延べ面積10,000㎡以上の大規模建築物を対象とした水準です。大規模なオフィス、ホテル、病院、商業施設などでは、建物用途や規模によってZEB Ready以上の達成が難しい場合があるため、用途ごとの省エネ性能や未評価技術の導入を含めて評価されます。

建物の省エネルギー性能は、BELS評価を通じて確認・表示されます。BELSは建築物の省エネルギー性能を第三者評価として示す制度で、登録された評価機関による評価を受けることで、ZEBに関する表示を行うことができます。

ZEB対応で確認すべき項目内容
外皮性能断熱、窓、日射遮蔽
空調設備高効率空調、ゾーニング、換気
照明設備LED、調光、人感センサー、昼光利用
BEMSエネルギー使用量の見える化
太陽光発電屋上面積、構造、防水、メンテナンス
BELS評価ZEB水準の確認・表示
補助金対象要件、申請時期、採択リスク

ZEB対応は、設計後半で追加するとコスト増や設計変更につながりやすくなります。

自社ビルや長期保有のオフィスビルでは、初期段階から省エネ性能、光熱費、企業ブランディング、ESG対応を含めて検討することが重要です。

BCP・防災計画も初期段階で検討する

自社ビルは、災害時の事業継続拠点になることがあります。そのため、通常時の快適性だけでなく、地震、水害、停電、通信障害への備えも検討しておく必要があります。

BCP項目確認内容
地震対策耐震、制震、免震の検討
水害対策電気室・機械室の配置、浸水リスク
停電対策非常用電源、蓄電池、太陽光発電
通信対策複数回線、サーバールーム、クラウド活用
備蓄防災倉庫、飲料水、非常食
避難計画階段、避難経路、非常照明、誘導灯

BCP対応は、後から追加すると設備計画や建物配置に影響する場合があります。

特に本社機能を持つ自社ビルでは、計画初期から防災・事業継続の考え方を整理しておくことが大切です。

建て替え・改修・減築の判断

既存の自社ビルやオフィスビルを持っている場合、新築だけでなく、建て替え、大規模改修、減築も選択肢になります。

選択肢向いているケース注意点
建て替え老朽化、耐震性不足、用途再構成、長期利用解体費、仮移転費、工期が大きい
大規模改修躯体を活かし、設備・内外装を更新したい既存条件の制約、追加工事リスク
減築空室や不要な面積を減らしたい収益床減少、構造・防水・法規確認
用途変更事務所から店舗、医療、宿泊などへ変更確認申請、消防、保健所対応

建て替えは自由度が高い一方で、費用と工期が大きくなります。改修は既存建物を活かせる一方で、構造や設備の制約が残る場合があります。減築は使っていない床を整理し、残す部分の価値を高める選択肢ですが、構造補強や防水、設備移設が必要になることがあります。

発注者としては、最初から一つの方法に決めるのではなく、建物調査、概算費用、工期、法規、将来の使い方を比較することが重要です。

2025年4月以降の大規模改修・リフォームで注意すべきこと

既存ビルを大規模改修する場合は、確認申請の要否も早めに確認する必要があります。2025年4月以降、4号特例の見直しにより、2階建ての木造戸建て等で行われる大規模なリフォームは、主要構造部の1種以上について過半の改修等を行う場合に建築確認手続の対象となるケースがあります。主要構造部は、壁・柱・床・梁・屋根・階段などです。

ただし、4号特例縮小の主な影響対象は、木造2階建て等の小規模建築物です。中高層のオフィスビルや一定規模以上の建築物では、従来から大規模修繕・大規模模様替に該当する工事で確認申請が必要となるケースがありました。

そのため、オフィスビル改修では「2025年4月からすべてが新たに変わった」と考えるのではなく、主要構造部への影響、既存不適格、用途変更、増築・減築の有無を整理し、確認申請の要否を早めに確認することが重要です。

施工会社選定で確認すべきこと

自社ビル・オフィスビル建設では、施工会社の選定も重要です。見積金額だけで判断すると、工事範囲の違い、除外項目、仕様差、追加工事リスクを見落とす可能性があります。

比較項目確認内容
見積範囲建築、設備、外構、サイン、仮設が含まれているか
除外項目申請費、通信工事、什器、外構などの除外
仕様外装、内装、設備機器のグレード
設備内容空調、電気、給排水、消防、通信
工期希望竣工時期に合うか
施工体制現場監督、協力会社、品質管理
VE提案コストを抑える代替案があるか
アフター対応完成後の修繕・保守対応

安い見積が必ず悪いわけではありません。重要なのは、なぜ安いのか、何が含まれているのか、将来的な追加費用リスクがないかを確認することです。

発注方式の選び方

自社ビル・オフィスビル建設では、発注方式によってプロジェクトの進め方が変わります。

発注方式特徴向いているケース
設計施工一括方式設計と施工を一体で依頼スピード重視、窓口を一本化したい場合
設計・施工分離方式設計者と施工会社を別々に選定設計内容を重視したい場合
CM方式発注者側の立場で計画・コスト・工程を支援発注者に建築専門人材が少ない場合
DBO方式設計・建設・運営を一体で発注公共施設、地域施設、長期運営を含む施設

一般的なオフィスビルでは、設計施工一括方式や設計・施工分離方式が検討されることが多くあります。

一方で、発注者側に建築専門人材が少ない場合や、複数社の見積比較、VE、工程管理、コスト管理が必要な場合は、CM方式の活用を検討することもあります。

自社ビル・オフィスビル建設の進め方

自社ビル・オフィスビル建設は、以下の流れで進めると整理しやすくなります。

 
STEP 1 建設目的・事業方針を整理する

STEP 2 敷地条件・既存建物の有無を確認する

STEP 3 必要面積・機能・予算を整理する

STEP 4 建て替え・改修・新築の方向性を比較する

STEP 5 構造・設備・ZEB・BCP方針を検討する

STEP 6 設計者・発注方式を検討する

STEP 7 基本設計・概算費用を確認する

STEP 8 実施設計・確認申請・省エネ対応を進める

STEP 9 施工会社を選定する

STEP 10 工事・監理・工程管理を行う

STEP 11 竣工・引渡し・移転・運用開始
 

この流れの中で特に重要なのは、基本構想から基本設計の段階です。この段階で建物規模、予算、設備、法規、ZEB、BCPを整理しておくことで、後の設計変更や予算超過を防ぎやすくなります。

発注者が準備すべき資料

自社ビル・オフィスビル建設を検討する際は、以下の資料を準備しておくと、計画が進めやすくなります。

資料確認する内容
敷地資料登記簿、公図、測量図、境界、接道
既存建物資料図面、確認済証、検査済証、修繕履歴
社員数・部署構成必要面積、席数、会議室数
現在の課題狭さ、設備不足、老朽化、移転理由
将来計画増員、組織変更、テナント貸し
予算条件総事業費、融資、補助金、予備費
スケジュール竣工希望日、移転時期、仮移転の有無
設備条件空調、電気、通信、セキュリティ、サーバー
BCP条件非常用電源、浸水対策、防災備蓄
省エネ方針ZEB Ready、BELS評価、太陽光発電など

資料が不足していると、設計者や施工会社に正確な条件を伝えにくくなります。

特に既存ビルの建て替えや改修では、既存図面、検査済証、修繕履歴、耐震診断資料が重要です。

発注者向けチェックリスト

自社ビル・オフィスビル建設を検討する際は、以下の項目を初期段階で確認しておきましょう。

チェック項目確認内容
建設目的自社利用、賃貸、建て替え、資産活用のどれか
必要面積現在の社員数と将来の増員を反映しているか
構造木造、S造、RC造の比較を行ったか
建設費本体工事費だけでなく、設計費・外構・什器・予備費を含めたか
設備計画空調、電気、通信、給排水、消防を整理したか
ZEB・省エネZEB水準、BELS評価、太陽光発電の可能性を確認したか
BCP地震、水害、停電、通信障害への対応を検討したか
建て替え・改修既存ビルがある場合、建て替え・改修・減築を比較したか
発注方式設計施工一括、分離発注、CM方式を比較したか
施工会社選定見積範囲、除外項目、工期、施工体制を比較したか

自社ビル・オフィスビル建設は初期計画が重要

自社ビル・オフィスビル建設では、費用、設計、構造、設備、ZEB、省エネ、BCP、建て替え、改修、施工会社選定など、多くの要素を初期段階で整理する必要があります。特に重要なのは、建物の目的を明確にすることです。

自社利用なのか、賃貸なのか、長期保有なのか、将来の用途変更や増員を見込むのかによって、必要な面積、設備、構造、コストの考え方は変わります。

また、2025年4月以降は、新築建築物の省エネ基準適合義務や、大規模リフォームに関する確認申請範囲の確認など、発注者が早期に把握すべき制度面のポイントも増えています。

発注者として重要なのは、設計や見積を急ぐ前に、事業目的、敷地条件、予算、工期、法規、設備、ZEB、将来の使い方を整理することです。

自社ビル・オフィスビルは、完成後も長く使い続ける資産です。短期的な建設費だけでなく、維持管理費、働きやすさ、資産価値、災害対応、将来の変更可能性まで含めて、総合的に計画することが求められます。

 

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