2026年の省エネ基準強化で商業ビルの建設費は上がる?中規模非住宅の設備計画と発注時の注意点
2026年4月から中規模商業ビルの省エネ基準が強化
商業ビルやテナントビルの新築を検討する企業にとって、建設費の高騰は大きな課題となっています。資材価格や労務費、設備工事費などが建設予算に影響するなか、2026年4月からは中規模非住宅建築物の省エネルギー基準も強化されました。
今回の改正は、延床面積300㎡以上2,000㎡未満のオフィスビル、ホテル、物販店舗、飲食店など、幅広い非住宅建築物に関係するものです。
2025年4月1日からは、原則としてすべての新築・増改築について省エネ基準への適合が義務付けられました。さらに2026年4月1日からは、中規模非住宅建築物に求められる一次エネルギー消費性能の基準が、用途に応じて15~25%強化されています。これまでの設計条件では基準を満たせていた建物でも、新しい基準では空調や照明などの設備仕様を見直す必要が生じる場合があります。
特に注意したいのは、今回の改正が単なる省エネ設備の導入推奨ではなく、建築確認や工事工程にも関係する法令上の基準変更であるという点です。
本記事では、2026年の省エネ基準強化の対象と具体的な変更内容を整理し、商業ビルの建設費、設備設計、発注スケジュールへの影響について、コンストラクションマネジメント(CM)の視点から解説します。
2026年の省エネ基準強化はどの建物が対象?
今回の基準強化の対象は、原則として延床面積300㎡以上2,000㎡未満の中規模非住宅建築物です。対象となる建物には、事務所、ホテル、百貨店・物販店舗、飲食店、病院、集会所、工場などがあります。
例えば、延床面積800㎡のテナントビルや1,500㎡の商業施設、1,200㎡のビジネスホテルなどを新築する場合は、今回の基準強化を考慮する必要があります。一方、300㎡未満の小規模非住宅建築物については、2026年4月の今回の基準引上げの対象ではなく、一次エネルギー消費性能に関する基準は原則としてBEI 1.00のままです。ただし、省エネ基準への適合義務自体がなくなるわけではありません。
また、2,000㎡以上の大規模非住宅建築物については、2024年4月から既に用途別の強化基準が適用されています。
なお、省エネ基準の面積区分を判断する際には、法令で定める「高い開放性を有する部分」の床面積の取扱いにも注意が必要です。増改築の場合は、2025年4月から原則として増改築部分の省エネ基準適合が求められる制度となっており、適用する基準の規模区分も増改築部分の面積に応じて判断する必要があります。
2026年4月1日以降の省エネ適判申請が対象
今回の基準強化は、2026年4月1日に施行されました。国土交通省の資料によると、原則として施行日以降に省エネ適合性判定(省エネ適判)を申請する対象建築物には、新しい基準が適用されます。一方、2026年4月1日より前に省エネ適判を申請した計画には、改正前の基準が適用されます。
さらに、国土交通省の「中規模非住宅の基準引上げに伴う新旧基準の適用時点について」では、施行日前に申請した当該計画に関する変更申請についても、改正前の基準を適用することが示されています。
ただし、変更内容や具体的な手続きについては、所管行政庁または登録建築物エネルギー消費性能判定機関への確認が必要です。
つまり、新基準が適用されるかどうかは、工事の着工日や竣工日だけで判断するのではなく、省エネ適判の申請時期と計画の内容を確認することが重要です。
省エネ基準はどのくらい厳しくなった?
今回の改正では、建物の用途に応じて一次エネルギー消費性能の基準が引き上げられました。省エネ性能を評価する際に用いられるのが、BEI(Building Energy Index)という指標です。
BEIは、国が定める算定方法に基づき、設計上の一次エネルギー消費量と基準となる一次エネルギー消費量を比較するための指標です。一般に、数値が小さいほど省エネルギー性能が高いことを示します。
今回の改正では、中規模非住宅建築物のBEI基準が従来の1.00から用途別に引き下げられました。
| 建物用途 | 従来のBEI基準 | 2026年4月以降 | 基準の強化率 |
|---|---|---|---|
| 事務所・学校等 | 1.00 | 0.80 | 20% |
| ホテル・百貨店等 | 1.00 | 0.80 | 20% |
| 病院・飲食店・集会所等 | 1.00 | 0.85 | 15% |
| 工場等 | 1.00 | 0.75 | 25% |
※国土交通省「中規模非住宅建築物に係る省エネ基準の引上げについて」に基づく。一次エネルギー消費性能の基準値であり、建設費や実際の電気料金の増減率を示すものではありません。
例えば、延床面積1,000㎡の事務所ビルを計画する場合、従来はBEI 1.00以下であれば適合できたところ、2026年4月以降の新基準では0.80以下とする必要があります。設計段階でBEI 0.90となっている場合、従来の基準では適合していても、新基準には適合しません。そのため、空調や照明などの設備性能を見直し、再計算する必要があります。
ただし、BEIが0.80であることは、実際の電気料金が必ず20%削減されるという意味ではありません。建物のエネルギー使用量や光熱費は、営業時間、空調設定、設備の使用状況、テナントの運営方法などによって変わります。
また、飲食店と事務所が混在するテナントビルなどでは、用途ごとの条件を踏まえた省エネ計算が必要になるため、建物全体の用途構成を適切に整理することが重要です。
省エネ基準の強化で建設費は高くなる?
商業ビルの発注者にとって、今回の改正で特に気になるのが建設費への影響です。省エネ基準が厳しくなることで、従来よりも高効率な空調設備や照明設備、断熱性能の高い建材などが必要になる場合があります。
ただし、省エネ基準が20%強化されたからといって、建設費も20%増加するわけではありません。実際の追加費用は、当初設計の省エネ性能、採用する設備仕様、建物の用途、規模、外皮条件などによって変わります。
例えば、もともと高効率空調やLED照明を採用している計画では、大きな仕様変更を行わずに新基準を満たせる場合があります。一方、従来型の設備を前提としていた計画では、基準に適合させるために機器の変更や設計の見直しが必要になることがあります。
そのため、追加工事費を一律の割合で見込むのではなく、設計段階で省エネ計算を行い、基準を満たすために必要な仕様変更を整理することが重要です。
空調設備の見直し
商業ビルやオフィスビルでは、空調設備のエネルギー消費が建物全体の省エネ性能に大きく影響する場合があります。今回の基準強化に対応するため、高効率な空調機器への変更、熱源方式の検討、空調系統の分割、制御方式の見直しなどが必要になることがあります。ただし、単に高価な空調設備を選べばよいわけではありません。
例えば、テナントごとに営業時間が異なるビルでは、フロアや区画ごとに空調を制御できる構成が、運用上も合理的になる場合があります。
一方、過剰な設備容量を設定すると、初期費用の増加だけでなく、部分負荷運転時の効率にも影響する可能性があります。
そのため、建物の用途や実際の利用条件を踏まえ、必要な空調能力と省エネ性能を両立させることが重要です。
照明設備と制御システム
照明設備も、一次エネルギー消費量の計算に関係する重要な項目です。LED照明の採用に加え、人感センサーや明るさセンサー、スケジュール制御などを組み合わせることで、照明のエネルギー消費を抑えられる可能性があります。
例えば、営業時間が長い商業施設では、共用部やバックヤードなどの使用状況に応じた照明制御が検討対象になります。ただし、照明を暗くすることだけで省エネ性能を高めようとすると、店舗の視認性や作業環境に影響する可能性があります。
そのため、必要な照度や照明の品質を確保したうえで、器具効率と制御方式を検討する必要があります。
外壁・窓・断熱性能の見直し
外壁や屋根、窓などの断熱性能も、空調負荷を通じて建物全体のエネルギー消費に影響します。例えば、大きなガラス面を設けた商業ビルでは、日射による室内温度の上昇や、冬季の熱損失などを考慮する必要があります。
そのため、Low-E複層ガラスや断熱材、日射遮蔽設備などを検討することがあります。ただし、窓の仕様変更は、省エネ性能だけでなく、外観デザイン、採光、室内の快適性、建設費にも影響します。
また、2026年4月の中規模非住宅建築物の基準強化は、主として一次エネルギー消費性能の基準引上げであり、すべての商業ビルに特定の断熱材やガラス製品の採用を義務付けるものではありません。重要なのは、建物全体の計算結果を確認し、空調設備と外皮性能を総合的に検討することです。
設計変更によって工事費が増加するケース
省エネ基準への対応では、設備そのものの価格だけでなく、関連工事費が増える場合があります。例えば、計画途中で空調方式を変更した場合、新しい空調機器の価格差だけでなく、配管やダクト、電気配線、天井内スペースの調整が必要になることがあります。
また、窓の断熱仕様を変更する場合には、ガラスだけでなく、サッシの構造や取付け条件の見直しが必要になることもあります。このような変更が実施設計の後半や施工会社との契約後に発生すると、設計修正や見積の再取得、資材調達の変更などによって、追加費用や工程遅延につながる可能性があります。
特に建設費が高い水準にある現在では、設備仕様の変更が予算へ与える影響を早い段階で確認することが重要です。
発注者が確認したい追加費用の内訳
| 検討項目 | 工事費への主な影響 |
|---|---|
| 高効率空調への変更 | 機器価格、配管・ダクト、制御設備 |
| 照明・制御設備の変更 | LED器具、センサー、制御盤、配線 |
| 外皮・窓仕様の変更 | 断熱材、ガラス、サッシ、施工納まり |
| 設備配置の変更 | 機械室、天井内スペース、設備架台 |
| 省エネ設計・再計算 | 設計業務、計算、申請対応 |
| 設計変更に伴う調整 | 見積再取得、工程変更、調達条件の見直し |
実際には、すべての項目で追加費用が発生するわけではありません。例えば、外皮性能の改善によって空調負荷を抑え、空調設備の容量や仕様を合理化できる場合もあります。一方、設備の変更によって機械室や設備スペースが増えれば、賃貸可能面積に影響する可能性もあります。
そのため、設備単体の価格差だけでなく、建物全体の工事費と事業収支への影響を確認することが重要です。
テナントビルでは入居する業種によって省エネ計画が変わる
商業ビルの中でも、複数のテナントが入居する建物では、省エネ計画が複雑になりやすい傾向があります。例えば、1階が飲食店舗、2階以上が事務所となる建物では、フロアごとに空調や換気、照明、給湯などの使用条件が異なります。
飲食店舗では厨房の排気や給湯などが重要になる一方、事務所では執務空間の空調や照明のエネルギー消費が中心となる場合があります。そのため、テナントビルでは用途の違いを踏まえて設備計画を立てることが重要です。
また、新築時点で入居テナントが決まっていない場合には、どのような業種を想定して省エネ計算を行うのかが課題となります。建物本体工事とテナント内装工事が分かれている場合でも、設備条件を十分に整理しなければ、後から空調や照明、換気設備の変更が必要になる可能性があります。
そのため、発注者は設計段階で、想定テナントの業種、共用部と専有部の設備区分、将来の設備容量、入居後の変更条件などを整理しておく必要があります。
なお、テナント工事に伴って設備仕様や建物用途が変更される場合は、省エネ計算や申請手続きへの影響についても確認が必要です。
省エネ適判は建築確認や工期にどう影響する?
今回の基準強化では、基本的な省エネ適判の手続きそのものが新しく追加されたわけではありません。2025年4月からの制度と同様に、省エネ適判が必要な建築物では、所管行政庁または登録建築物エネルギー消費性能判定機関による判定を受け、建築確認の手続きにおいて適合性判定通知書を提出する必要があります。
ただし、基準値が厳しくなったことで、省エネ計算の結果によっては設備仕様を見直し、再計算する必要が生じる場合があります。例えば、基本設計の段階では旧基準を前提としていた計画を、2026年4月以降に初めて省エネ適判申請する場合、BEIが新基準を満たしていなければ設計変更が必要になります。
一方、施行日前に省エネ適判を申請した計画については、国土交通省が示す経過措置により改正前の基準が適用され、当該計画に関する変更申請についても改正前の基準が適用されます。ただし、実際に行う変更が当該計画の変更として扱われるかどうかや、変更内容に応じて必要となる手続きについては、所管行政庁または判定機関への確認が必要です。
また、省エネ適判で適合した後に空調設備や照明仕様などを変更する場合は、変更内容に応じて計画変更や軽微変更に関する所定の手続きが必要になることがあります。そのため、発注者は建築確認の申請予定日だけでなく、省エネ適判の申請時期と設計変更の管理方法を確認しておく必要があります。
特に、建築確認後にテナントの要望で設備仕様を変更する可能性がある場合は、あらかじめ設計者と対応方針を整理しておくことが望まれます。
既存商業ビルのリノベーションにも新基準が適用される?
今回の基準強化は、既存建物のすべての修繕・改修工事に一律に適用されるものではありません。例えば、既存商業ビルで空調設備を交換したり、内装を更新したりするだけの場合、一般にその工事だけを理由として、2026年4月の中規模非住宅建築物の新基準への適合義務が生じるわけではありません。
一方、建築物省エネ法上の適合義務の対象となる増築や改築を行う場合には、省エネ基準への適合が必要になります。2025年4月以降は、増改築の場合に省エネ基準への適合が求められる範囲が見直され、原則として増改築を行う部分が対象となっています。
また、今回の中規模・大規模の基準区分についても、増改築では対象となる部分の面積に応じて判断する取扱いが示されています。そのため、既存建物の改修を計画する際は、単に建物全体の延床面積を見るのではなく、工事が法令上の増改築に該当するか、どの部分が省エネ基準適合の対象となるかを確認する必要があります。
建物の用途変更や大規模修繕・模様替えについても、省エネ適合義務が適用されるかどうかと、建築基準法・消防法などの手続きは分けて確認することが重要です。
2030年にはZEB水準まで省エネ基準が強化される?
政府は、2030年度以降に新築される住宅・建築物について、ZEH・ZEB水準の省エネルギー性能を確保することを目指しています。そのため、2026年4月の基準強化は、省エネ性能を段階的に高めていく政策の一環と位置付けられています。
国土交通省が示す「遅くとも2030年度までに目指す水準」では、中規模非住宅建築物について、用途に応じて次のBEI水準が示されています。
| 建物用途 | 2026年度の基準 | 2030年度までに目指す水準 |
|---|---|---|
| 事務所・学校・工場等 | 0.80(工場等は0.75) | 0.60 |
| ホテル・百貨店等 | 0.80 | 0.70 |
| 病院・飲食店・集会所等 | 0.85 | 0.70 |
※2030年度の数値は、国土交通省の資料に示された将来の目標水準です。2026年10月時点で、すべての中規模非住宅建築物に対してこの数値への適合が義務付けられているわけではありません。
また、2026年度の基準と2030年度までに目指す水準では、発電設備の自家消費分に関する評価上の取扱いにも違いがあります。国土交通省の資料では、2026年度のBEI基準について、太陽光発電設備とコージェネレーション設備の発電量のうち、自家消費分を含むことが注記されています。
一方、2030年度までに目指すBEI水準では、コージェネレーション設備の発電量のうち自家消費分のみを含む取扱いが示されています。つまり、将来の目標水準を検討する際には、太陽光発電による自家消費分をBEIの低減に算入することを前提とせず、建物本体や設備の省エネ性能によって必要な水準を確保する計画が重要になります。
ただし、これらは国土交通省が現時点で示している目標水準の考え方であり、将来の具体的な義務基準や評価方法については、今後の制度改正を確認する必要があります。
また、ZEB水準の省エネ性能を確保することと、すべての建物に「ZEB」の認証・評価取得が義務付けられることは同じではありません。一方、新築商業ビルは長期間にわたって使用する建物です。将来の省エネ基準の強化やテナントの環境性能に対する要求を考えると、現在の法定最低基準を満たすことだけでなく、建物の用途や投資計画に応じて、より高い省エネ性能を検討することにも意味があります。
ただし、初期工事費が大きく増加する場合には、運用費の削減効果や将来の更新費用を含めて投資判断を行うことが重要です。
建設費高騰時代に発注者が検討すべき省エネ投資
省エネ基準が強化されると、高効率設備の導入による初期費用の増加に注目しがちですが、発注者にとって重要なのは、建物を長期間使用した場合の総費用です。例えば、高効率空調への変更によって初期工事費が増えた場合でも、運用時のエネルギー消費量を抑えられれば、長期的な光熱費削減につながる可能性があります。
ただし、実際の削減額は、設備の運転時間、空調負荷、エネルギー単価、維持管理費などによって異なります。そのため、省エネ設備の投資効果を検討する際には、初期費用だけでなく、想定する年間運転費用や保守費用、将来の機器更新費用まで整理する必要があります。
特にテナントビルでは、空調や電気料金を建物オーナーとテナントのどちらが負担するかによって、投資効果の捉え方も変わります。例えば、設備導入費をオーナーが負担し、電気料金をテナントが支払う契約の場合、光熱費削減の効果がそのままオーナーの収益改善につながるとは限りません。
そのため、設備投資による効果を建物の賃貸競争力や運営条件と合わせて評価することが重要です。
また、将来の基準強化を見据えて高い性能を確保する場合でも、初期投資の増加を無制限に認めるのではなく、段階的な設備更新が可能か、将来の用途変更に対応できるかといった視点も必要です。
現行の法令基準への適合、将来の省エネ性能、初期建設費、長期運用費の4つを分けて検討することが、合理的な投資判断につながります。
コンストラクションマネジメントによる省エネ基準対応の重要性
中規模商業ビルの新築では、建築設計、空調・換気設備、照明、電気設備、テナント計画など、複数の専門分野が関係します。今回の省エネ基準強化では、これらの仕様が一次エネルギー消費性能の計算結果に影響するため、設備ごとに個別の仕様を決定するだけでは、効率的な計画にならない場合があります。
このような場面で重要になるのが、発注者の立場で建設プロジェクトを支援するコンストラクションマネジメント(CM)です。
CMでは、計画初期から建物の用途、規模、事業予算、求める省エネ性能などを整理し、設計者や設備専門家と連携しながら、建築計画とコストの整合性を確認します。例えば、省エネ計算の結果が新基準を満たしていない場合、空調設備だけを高性能化するのか、照明制御や外皮性能も含めて見直すのかによって、追加費用や設計変更の範囲が変わります。
また、複数の施工会社から見積を取得する場合には、同じ省エネ性能を満たす仕様で比較できるように条件を整理することが重要です。特に注意したいのは、見積金額を下げるために設備仕様を変更した結果、省エネ計算の前提条件と施工仕様が一致しなくなるケースです。
そのため、VE(バリューエンジニアリング)によるコスト調整を行う場合も、変更後の仕様が省エネ基準を満たしているかを確認し、必要な再計算や申請対応を工程に反映する必要があります。さらに、2026年4月の基準強化に関する経過措置を確認し、適用される基準と申請スケジュールを設計者や判定機関と共有することも重要です。
建設費高騰時代の省エネ基準対応では、単に高性能設備を採用するのではなく、必要な性能を確保しながら、過剰な仕様や不要な追加工事を抑えることが重要になります。
発注者側で建設費、設備仕様、申請手続き、工期を一体的に管理することで、設計変更による追加費用や工程遅延のリスクを抑えやすくなります。
2026年の省エネ基準強化は設計初期からのコスト管理が重要
2026年4月1日から、延床面積300㎡以上2,000㎡未満の中規模非住宅建築物について、省エネルギー基準が強化されました。今回の改正では、用途に応じて一次エネルギー消費性能の基準が15~25%強化され、事務所・ホテル・百貨店等はBEI 0.80以下、飲食店・病院等は0.85以下、工場等は0.75以下が基準となっています。
また、原則として2026年4月1日以降の省エネ適判申請に新基準が適用されます。一方、施行日前に申請した計画については改正前の基準が適用され、当該計画の変更申請についても旧基準が適用される取扱いが示されています。ただし、具体的な変更内容や手続きについては、所管行政庁または判定機関への確認が必要です。
省エネ基準が強化されたからといって、すべての商業ビルで一律に建設費が増加するわけではありません。追加費用の有無や規模は、当初設計の性能、設備仕様、建物用途、施工条件などによって異なります。
重要なのは、計画初期の段階から省エネ性能を確認し、空調、照明、外皮性能などを総合的に検討することです。
また、2030年度までに目指すZEB水準では、2026年度の基準とは異なり、太陽光発電による自家消費分をBEI評価に含めない考え方が示されています。長期的な建物利用を見据える場合には、こうした将来の評価方法も踏まえた性能計画が重要です。
商業ビルの建設を検討する発注者は、法定基準への適合だけを目的とするのではなく、初期建設費、運用費、テナントの利用条件、将来の設備更新などを踏まえた合理的な計画を立てることが求められます。
コンストラクションマネジメントの視点を取り入れ、設計・設備・コスト・工程を一体的に管理することが、建設費高騰と省エネ基準強化の両方に対応するための重要な取り組みとなります。
※本記事は2026年10月時点の法令・公表資料を踏まえ、商業ビル・テナントビル・ホテル・店舗等の建設を検討する法人担当者向けに一般的な考え方を整理したものです。実際の省エネ基準適合義務、適用面積、BEI基準、増改築に関する取扱い、省エネ適判や建築確認の手続きは、建物の用途、規模、計画内容、申請時期などによって異なります。また、省エネ設備導入による工事費や運用費の増減は、採用仕様、施工条件、利用状況などによって異なります。2030年度までに目指す省エネ水準は、2026年10月時点のすべての建築物に適用される義務基準ではありません。具体的な計画では、建築士、設備設計者、省エネ適判機関および関係行政機関への確認が必要です。


