ビル建設費の坪単価相場|2025年統計で見るSRC・RC・S造の違いと総費用の注意点
「ビルの建設費はいくらくらいかかるのか」
「SRC造・RC造・S造で坪単価はどのくらい変わるのか」
「坪単価で計算した金額と、実際に必要な総費用はどれくらい違うのか」
ビル建設を検討する発注者が、最初に知りたいのは建設費の目安です。特にオフィスビル、テナントビル、商業ビル、複合用途ビルを計画する場合、構造、階数、用途、設備仕様、立地条件によって費用は大きく変わります。
ただし、坪単価だけで総費用を判断するのは危険です。坪単価はあくまで建物本体工事費を把握するための一つの目安であり、設計費、監理費、外構工事、地盤改良、杭工事、インフラ引込、解体工事、申請費、予備費などは別途必要になる場合があります。
本記事では、国土交通省の2025年建築着工統計を基に、SRC造・RC造・S造の構造別坪単価の参考値、総費用で見落としやすい項目、発注者が計画前に確認すべきポイントを、建設マネジメントの視点から解説します。
ビル建設費の坪単価を見る前に知っておきたい前提
ビル建設費を調べると、「S造は坪○万円」「RC造は坪○万円」といった情報が多く見つかります。しかし、坪単価は算出方法によって意味が変わります。
国土交通省の建築着工統計調査では、建築物の着工状況について、建築物の数、床面積、工事費予定額などが公表されています。e-Statでも、用途別・構造別の床面積や工事費予定額が提供されています。
ここで注意すべきなのは、統計上の「工事費予定額」は、建築確認や着工時点で届け出られた予定額であり、個別の見積書や最終的な精算額とは異なるという点です。実際の工事では、設計変更、資材価格、労務費、地盤条件、設備仕様、テナント要求、行政協議などにより、当初想定から費用が変動することがあります。
そのため、統計値は「大まかな相場感」を把握するための参考として使い、個別計画では必ず概算見積や設計条件の整理を行う必要があります。
2025年統計で見る構造別坪単価の参考値
国土交通省の「令和7年建築着工統計調査報告」では、2025年の建築物について、構造別の床面積と工事費予定額が公表されています。非木造のうち、SRC造、RC造、S造については、以下のような数値が示されています。
| 構造 | 2025年の床面積 | 2025年の工事費予定額 | 坪単価の参考値 |
|---|---|---|---|
| SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造) | 1,076千㎡ | 5,160億円 | 約158万円/坪 |
| RC造(鉄筋コンクリート造) | 18,437千㎡ | 75,550億円 | 約135万円/坪 |
| S造(鉄骨造) | 33,834千㎡ | 125,643億円 | 約123万円/坪 |
上記は、工事費予定額を床面積で除し、1坪あたりに換算した参考値です。SRC造が約158万円/坪、RC造が約135万円/坪、S造が約123万円/坪となり、統計上はSRC造、RC造、S造の順に坪単価が高い傾向が見られます。
ただし、この数値は「ビル専用」の統計ではなく、建築物全体の構造別統計です。用途、規模、地域、建物グレードが混在しているため、オフィスビル、商業ビル、ホテル、複合用途ビルの個別単価とは一致しません。
たとえば、同じS造でも、低層のテナントビルと高グレードのオフィスビルでは設備仕様が異なります。同じRC造でも、マンション、医療施設、学校、ホテルでは水回り、遮音、防火、空調、共用部仕様が変わります。したがって、構造別坪単価はあくまで初期検討の参考値として扱う必要があります。
SRC造・RC造・S造の違い
ビル建設では、構造の選定が建設費、工期、耐震性、耐火性、柱スパン、将来の使いやすさに影響します。
SRC造
SRC造は、鉄骨鉄筋コンクリート造のことです。鉄骨と鉄筋コンクリートを組み合わせた構造で、耐震性や耐火性、耐久性を確保しやすく、高層建築物や大規模建築物で採用されることがあります。
一方で、鉄骨工事と鉄筋コンクリート工事の両方が関係するため、一般的にはコストが高く、工期も長くなりやすい構造です。現在では、建物規模や設計条件によっては、S造やRC造、CFT造など他の構造形式が検討されることもあります。
発注者がSRC造を検討する場合は、「高層だからSRC造」と単純に決めるのではなく、建物高さ、耐震計画、施工性、工期、将来用途、維持管理を含めて比較する必要があります。
RC造
RC造は、鉄筋コンクリート造のことです。耐火性、遮音性、耐久性に優れ、オフィスビル、マンション、医療施設、学校、ホテルなど幅広い用途で採用されます。
一方で、S造に比べると躯体重量が大きくなりやすく、地盤条件によっては杭工事や基礎工事の費用に影響する場合があります。また、現場で型枠、鉄筋、コンクリート工事を行うため、工期が長くなることもあります。
ホテルや共同住宅のように遮音性や耐火性が重視される建物では、RC造が検討されることがあります。一方、テナントビルや商業ビルでは、柱位置や将来の区画変更のしやすさも重要になるため、用途に応じた比較が必要です。
S造
S造は、鉄骨造のことです。低層から中層のオフィスビル、商業施設、テナントビル、工場、倉庫などで広く採用されます。
S造は、部材を工場で製作し、現場で建方を行うため、工期短縮を図りやすい構造です。また、大スパンを確保しやすく、商業施設やテナントビルのように自由度の高い空間を求める建物と相性がよい場合があります。
一方で、耐火建築物とする場合には耐火被覆などの対応が必要になります。また、遮音性や振動、床のたわみ、設備振動への配慮が必要になる場合もあります。発注者は、初期建設費だけでなく、用途に合った性能を確保できるかを確認する必要があります。
用途によって坪単価は大きく変わる
ビル建設費は、構造だけで決まるものではありません。実際には、用途によって必要な設備、内装、法規対応、共用部仕様が大きく異なります。
オフィスビルでは、空調、換気、受変電設備、エレベーター、セキュリティ、OAフロア、共用トイレ、貸室の可変性が重要になります。テナントビルでは、将来の区画分割や用途変更を見据えた設備容量、給排水ルート、電気容量、排気ルートがコストに影響します。
商業ビルでは、物販、飲食、サービス店舗、クリニック、ショールームなど、どのテナントを想定するかで必要な設備が変わります。飲食店を入れる場合は、厨房排気、給排水、グリーストラップ、ガス、消防設備、臭気対策が必要になることがあります。
ホテルや宿泊施設では、客室数、客室面積、水回り、遮音、空調、給湯、換気、消防設備、フロント、バックヤード、リネン庫、レストラン、宴会場の有無が建設費に影響します。
つまり、「S造だから安い」「RC造だから高い」といった単純な比較だけでは不十分です。発注者は、構造と用途をセットで考え、想定する運営内容に必要な性能を整理する必要があります。
地域差と敷地条件も建設費に影響する
ビル建設費は、地域によっても変動します。都市部では、労務費、搬入条件、仮設計画、近隣対策、道路使用、夜間工事、狭小地対応などにより、工事費が高くなりやすい傾向があります。
一方、地方であっても必ず安くなるとは限りません。施工会社の選択肢が少ない地域、資材搬入距離が長い地域、地盤が弱い地域、インフラ整備が不足している敷地では、全国平均より高くなる場合があります。
また、同じ延床面積でも、敷地条件によって費用は変わります。前面道路が狭い、隣地との距離が近い、高低差がある、既存建物の解体が必要、地中障害物がある、地盤改良や杭工事が必要といった条件は、坪単価に直接影響します。
統計上の平均坪単価を見るだけでなく、計画地ごとの条件を早期に確認することが重要です。
坪単価だけでは見えない建設関連費用
発注者が最も注意すべきなのは、坪単価に含まれない費用です。建築着工統計の工事費予定額を基にした坪単価は、建物本体工事費の目安としては参考になります。しかし、実際のプロジェクトでは、本体工事費以外にも多くの費用が発生します。
| 費用項目 | 発注者が確認すべき内容 |
|---|---|
| 設計・監理料 | 基本設計、実施設計、確認申請、工事監理の範囲 |
| 外構工事 | 駐車場、舗装、植栽、外部照明、フェンス、サイン |
| 地盤改良・杭工事 | 地盤調査結果により大きく変動 |
| インフラ引込 | 電気、水道、下水、ガス、通信の容量・引込距離 |
| 解体工事 | 既存建物、アスベスト、地中障害物の有無 |
| 申請・行政協議 | 建築確認、消防協議、開発許可、景観、駐車場条例等 |
| 家具・什器・備品 | オフィス家具、ホテルFF&E、店舗什器など |
| 予備費 | 設計変更、市況変動、追加工事への備え |
建物本体工事費にこれらを加えると、建設関連費用は本体工事費の1.3〜1.5倍程度を見込むケースがあります。ただし、この倍率はあくまで実務上の概算目安です。土地取得費、金融費用、税金、開業準備費、テナント誘致費、運転資金まで含めるかどうかによって、総事業費の範囲は変わります。
そのため、発注者は「坪単価×延床面積」ではなく、「建物本体工事費」「建設関連費用」「事業全体費用」を分けて整理する必要があります。
S造ビルの概算費用例
2025年統計から試算したS造の参考坪単価を約123万円/坪とした場合、延床面積別の建物本体工事費は以下のように概算できます。
| 延床面積 | 建物本体工事費の概算 | 建設関連費用の目安 |
|---|---|---|
| 100坪 | 約1億2,300万円 | 約1億6,000万〜1億8,500万円 |
| 300坪 | 約3億6,900万円 | 約4億8,000万〜5億5,000万円 |
| 500坪 | 約6億1,500万円 | 約8億〜9億2,000万円 |
ここでいう建設関連費用の目安は、建物本体工事費に設計・監理料、外構、地盤改良、インフラ引込、申請費、予備費などを加えた概算です。土地取得費、金融費用、税金、開業準備費は含めていません。
また、S造約123万円/坪という数値は、2025年の構造別統計から算出した全国平均の参考値です。オフィスビル、商業ビル、ホテル、医療ビルなど用途が変わると、設備仕様や内装条件が変わるため、実際の費用は大きく異なります。
建設費が上がりやすい主な要因
ビル建設費が上がりやすい要因は、構造だけではありません。発注者が計画初期に確認すべき主な要因は、設備仕様、外装・内装グレード、省エネ対応、消防・避難計画、地盤条件、インフラ容量、テナント要求です。
設備仕様では、空調方式、受変電設備、非常用発電機、給排水、換気、エレベーター、セキュリティ、BEMSなどが費用に影響します。特にオフィスビルやテナントビルでは、将来入居するテナントの要求水準によって、電気容量、空調能力、給排水ルート、通信設備をどこまで見込むかが変わります。
外装・内装では、カーテンウォール、石材、タイル、高グレードな共用部、ホテル仕様の内装、商業施設の演出照明などが費用に影響します。デザイン性を高めることは資産価値や集客力につながる一方、初期建設費と維持管理費の両方を押し上げる可能性があります。
省エネ対応も重要です。国土交通省は、令和7年4月1日から、原則すべての新築住宅・非住宅について省エネ基準への適合を義務付ける制度を施行しています。 ビル建設でも、確認申請前から省エネ基準への適合を前提に、断熱、空調、照明、換気、給湯、外皮性能を整理する必要があります。
建設費を抑えるには、単に仕様を下げるのではなく、建物の用途、収益性、運営方針に対して必要な性能を見極めることが重要です。
補助金・税制優遇は早期確認が必要
ビル建設では、省エネ設備、ZEB、再生可能エネルギー、税制優遇などの制度を活用できる場合があります。ただし、補助金や税制優遇は、年度、建物用途、延床面積、対象設備、申請区分、着工時期によって条件が変わります。
たとえば、SIIは令和8年度ZEB実証事業について、一次公募と二次公募の期間、交付決定時期などを公表しています。2026年度の一次公募は2026年5月12日から6月11日、二次公募は2026年7月24日から8月17日とされています。
補助金は、交付決定前の契約や着工が対象外となる場合があります。そのため、補助金を前提にする場合は、設計開始後に調べるのではなく、企画段階で最新の公募要領、申請スケジュール、対象経費、設計要件を確認する必要があります。
発注者は、補助金を「後から使えればよいもの」と考えるのではなく、設計条件、工程、発注方式と一体で管理する必要があります。
ビル建設費を最適化するための進め方
ビル建設費を適正に管理するには、計画初期の条件整理が重要です。まず、用途を明確にします。オフィスビルなのか、商業ビルなのか、ホテルなのか、複合用途なのかによって、必要な設備、法規制、共用部仕様が変わります。テナント未定のビルでは、将来どの用途まで受け入れるかを決めておく必要があります。
次に、構造と階数を早期に比較します。S造、RC造、SRC造は、それぞれコスト、工期、耐火、遮音、柱スパン、設備計画への影響が異なります。構造は後から簡単に変えられないため、基本計画段階で複数案を比較することが重要です。
また、地盤調査とインフラ確認を早期に行います。地盤改良や杭工事、電気容量、給排水、ガス、通信の引込条件は、建設費に大きく影響します。用地取得後に想定外の費用が判明すると、事業計画全体に影響します。
さらに、法規制を初期段階で確認します。用途地域、建ぺい率、容積率、高さ制限、防火地域、駐車場条例、消防法、バリアフリー法、省エネ基準などは、建物規模や設計自由度に直結します。
最後に、複数社の見積を比較します。見積比較では、総額だけでなく、仮設、躯体、外装、内装、電気、空調、衛生、昇降機、外構、諸経費の内訳を確認する必要があります。見積条件が揃っていない場合、単純な価格比較はできません。
CM方式で建設費と見積を整理する
ビル建設では、構造、設備、法規制、補助金、発注方式、施工会社選定が複雑に関係します。発注者が単独で妥当な建設費を判断するのは容易ではありません。
コンストラクションマネジメント方式では、発注者側の立場で、計画初期から建設費、設計条件、見積条件、発注方式を整理します。
たとえば、構造別の概算比較、用途別の必要設備、法規制による制約、地盤・インフラ条件、補助金スケジュール、見積内訳の妥当性を確認し、発注者が判断しやすい状態にします。
特に、設計が進んだ後に予算超過が判明すると、設計変更、仕様削減、工期遅延につながります。CM方式では、基本計画や基本設計の段階で概算コストを確認し、予算と設計内容のずれを早期に把握することができます。
また、施工会社の見積を比較する際も、見積範囲、除外項目、単価、数量、仮設条件、設備仕様を整理することで、単なる総額比較ではなく、発注者にとって適正な判断につなげやすくなります。
発注者が計画前に確認すべきこと
ビル建設費を検討する際、発注者は次の項目を早期に確認する必要があります。
| 確認項目 | 確認すべき内容 |
|---|---|
| 用途 | オフィス、商業、ホテル、複合用途など |
| 構造 | SRC造、RC造、S造のどれが用途・規模・予算に適しているか |
| 延床面積 | 貸床面積、共用部、機械室、駐車場を含めた面積 |
| 地盤 | 地盤改良や杭工事の必要性 |
| インフラ | 電気、水道、下水、ガス、通信の容量 |
| 法規制 | 用途地域、容積率、高さ制限、防火、消防、バリアフリー、省エネ |
| 設備仕様 | 空調、電気、給排水、換気、昇降機、防災設備 |
| 外構 | 駐車場、搬入動線、歩行者動線、緑化、サイン |
| 補助金 | 省エネ、ZEB、税制優遇の対象可否と申請時期 |
| 見積条件 | 複数社比較ができる同一条件になっているか |
これらを整理せずに坪単価だけで予算を組むと、後から追加費用が発生しやすくなります。特に、地盤、インフラ、消防、省エネ、テナント要求は、計画後半で発覚すると費用と工期への影響が大きくなります。
ビル建設費は坪単価だけでなく総費用で判断する
ビル建設費の坪単価は、2025年の建築着工統計を基に試算すると、構造別の参考値としてSRC造約158万円/坪、RC造約135万円/坪、S造約123万円/坪となります。これは、国土交通省が公表している構造別の床面積と工事費予定額から算出した統計上の目安です。
ただし、この数値は個別のビル建設費をそのまま示すものではありません。オフィスビル、商業ビル、ホテル、複合用途ビルでは、用途、設備仕様、階数、地域、敷地条件、地盤、インフラ、法規制によって実際の費用が大きく変わります。
発注者が重視すべきなのは、坪単価の安さだけではありません。建物本体工事費に加えて、設計・監理料、外構、地盤改良、インフラ引込、解体、申請、予備費まで含めた建設関連費用を確認する必要があります。さらに、土地取得費、金融費用、税金、開業準備費を含める場合は、総事業費として別に整理する必要があります。
また、2025年4月以降は原則すべての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務付けられており、ビル建設でも省エネ対応を前提に計画する必要があります。補助金やZEBを検討する場合は、最新の公募要領と交付決定時期を確認し、設計・発注スケジュールに組み込むことが重要です。
ビル建設費を適正に把握するには、統計値を参考にしながらも、個別敷地、用途、構造、設備、法規制、見積条件を整理する必要があります。発注者は、坪単価だけで判断せず、総費用と事業性の両方から計画を検討することが重要です。
【重要事項】
本記事に記載している坪単価は、国土交通省の2025年建築着工統計調査における構造別の床面積と工事費予定額を基に試算した統計上の参考値です。個別のビル建設プロジェクトにおける見積金額、契約金額、確定工事費を示すものではありません。
建築着工統計の工事費予定額は、着工時点で届け出られた予定額であり、実際の請負金額や最終精算額とは異なる場合があります。用途、規模、階数、地域、敷地条件、地盤、構造、設備仕様、内外装グレード、建設時期の市況、発注方式により、実際の坪単価は大きく変動します。
本記事で示した「建設関連費用は本体工事費の1.3〜1.5倍程度」という表現は、設計・監理料、外構、地盤改良、インフラ引込、申請費、予備費などを含めた概算上の考え方であり、すべての案件に当てはまるものではありません。土地取得費、金融費用、税金、開業準備費、テナント誘致費、運転資金を含めるかどうかで総事業費の範囲は変わります。
補助金、省エネ基準、ZEB、税制優遇、消防、バリアフリー、駐車場条例等の条件は、年度、所在地、用途、規模、設計内容、申請時期により異なります。具体的な計画では、必ず最新の公募要領、法令、自治体条例、行政窓口の運用を確認してください。
実際にオフィスビル、商業ビル、ホテル、テナントビル、複合用途ビルの建設を検討する場合は、必ず設計者、施工会社、設備設計者、行政窓口、金融機関、税理士、建設マネジメント会社等に確認し、個別条件に応じた事業計画と概算費用を整理してください。


