DBO方式とは?設計・建設・運営を一体化する新しい公共施設マネジメントの形
近年、公共施設の老朽化や人口減少に伴い、「持続可能な施設運営」 が自治体にとって大きな課題となっています。
その解決策として注目されているのが、DBO方式(Design-Build-Operate) です。
従来の公共事業では、「設計」「建設」「運営」を別々に発注するケースが一般的でした。
しかし、DBO方式ではこれらを一体化し、民間の専門力を最大限に活用する官民連携(PPP)モデルとして位置づけられています。
本記事では、建設マネジメント(CM)の専門家視点から、
DBO方式の仕組み・PFIとの違い・導入メリット・実施時の注意点をわかりやすく解説します。
■ 1. DBO方式とは?
DBO方式とは、Design(設計)・Build(建設)・Operate(運営) を
ひとつの事業スキームとして民間事業者に一括して委ねる仕組みです。
行政(発注者)は施設の所有権を持ち続けながら、
民間事業者が設計・建設・運営を一体的に行うことで、
より効率的かつ柔軟な公共施設整備・運営を実現します。
● これまでの発注方式との違い
| 方式 | 特徴 | 主な課題 |
|---|---|---|
| 従来方式(設計・施工分離) | 設計者と施工者を別々に発注 | 設計変更・コスト増・工期遅延が発生しやすい |
| PFI方式(Build-Operate-Transfer) | 民間が設計・建設・運営・資金調達を一括 | 大規模・長期事業向け、導入ハードルが高い |
| DBO方式 | 設計・建設・運営を一括委託(資金は公共側) | 中小規模事業にも適用しやすい柔軟なスキーム |
DBOはPFIの簡易型モデルとも言われ、
資金調達を民間に任せないため、行政リスクを抑えつつ民間のノウハウを導入できる点が特徴です。
■ 2. DBO方式の導入が進む背景
● 公共施設の老朽化と維持管理コストの増加
全国の公共施設の多くが築30年以上を経過しており、修繕費・運営費が財政を圧迫しています。
DBO方式では、設計段階から「運営コスト(LCC:ライフサイクルコスト)」を考慮できるため、
長期的なコスト削減と品質維持が可能です。
● 行政の人材不足と専門力の外部活用
地方自治体では、施設運営のノウハウや技術者不足が課題です。
DBOは、設計・施工・運営を熟知する民間事業者が包括的に管理するため、
行政の負担軽減と運営効率化を同時に実現できます。
● 持続可能なまちづくり(SDGs・ZEB・BCP対応)
近年は、公共施設にもZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)やBCP(事業継続計画)などの環境・防災要件が求められています。
DBOでは設計・運営を一体化するため、初期段階から省エネ・防災設計を組み込むことが可能です。
■ 3. DBO方式のメリット
① 設計と運営をつなぐ「最適解」を導ける
運営を見据えた設計が可能となり、
維持管理コスト・運営効率を最適化した機能的な施設設計が実現します。
② コストとスケジュールの安定化
設計と施工を一体化することで、
設計変更リスクや追加費用を抑え、工期短縮と予算精度向上につながります。
③ 品質管理・責任の明確化
従来方式では「設計者」「施工者」「運営者」が分断され、
責任の所在が不明確になりがちでした。
DBOでは一括契約により、品質・運営責任を一元管理できます。
④ 行政・市民サービスの質向上
民間事業者のノウハウによる柔軟な運営により、
利用者満足度の高い施設運営が実現します。
■ 4. DBO方式とPFIの違い
| 比較項目 | DBO方式 | PFI方式 |
|---|---|---|
| 資金調達 | 公共側(自治体・国) | 民間側(SPCが融資) |
| 対象事業規模 | 小中規模中心 | 大規模・長期事業 |
| 契約期間 | 約10〜20年 | 約20〜30年 |
| 主な目的 | 設計・運営の一体化による効率化 | 民間資金活用による財政負担軽減 |
| リスク分担 | 公共側の管理下で限定的 | 民間が大きくリスク負担 |
つまり、DBOは「中規模・中期間」事業に最適な官民連携モデルです。
PFI導入が難しい中小自治体でも現実的に採用しやすく、
今後の公共施設再生の標準モデルとして注目されています。
■ 5. DBO方式の導入事例
● 事例①:地方自治体の体育館再整備プロジェクト
老朽化した市営体育館をDBO方式で建替え。
設計・施工・運営を一体化し、ZEB Ready仕様で再生。
エネルギーコストを30%削減し、運営費も年間約10%圧縮。
● 事例②:道の駅の再生プロジェクト
既存施設の老朽化に伴い、DBO方式を採用。
民間事業者が設計から店舗運営まで一貫対応し、地域特産品販売や観光拠点機能を併設。
地元雇用の創出と来訪者数1.5倍を達成。
■ 6. 建設マネジメント(CM)の役割
DBO方式では、行政・民間・設計者の連携が密接に関わるため、
**第三者の立場で全体を調整・統括する建設マネジメント(CM)**の導入が不可欠です。
CMの主な役割:
契約・スケジュール・コストの透明化
仕様書・VE提案によるコスト最適化
行政・事業者・設計者間の調整
品質・安全・工程の総合マネジメント
CMを導入することで、DBO方式のメリットを最大化し、
**「設計・施工・運営が連携した最適な公共施設づくり」**が実現します。
| 観点 | DBO方式の特徴 | 効果 |
|---|---|---|
| 発注方式 | 設計・建設・運営の一括委託 | 工期短縮・責任一元化 |
| コスト管理 | LCC重視・VE活用 | 運営費削減・財政安定 |
| 導入効果 | 行政負担軽減・品質向上 | 持続可能な施設運営 |
| 適用対象 | 小中規模公共施設 | 体育館・道の駅・文化施設など |
DBO方式は、PFIのような大規模スキームよりも柔軟で、
地方自治体や中規模公共施設に最適な新しい官民連携モデルです。
設計・建設・運営を「つなぐ」ことで、
コスト削減だけでなく、地域価値を高める公共施設経営が可能になります。


