地方企業がUターン・Iターン人材を呼び込むには?本社ビル建設で考える採用・定着・働く環境
地方企業にとって、人材採用は大きな経営課題です。人口減少や若年層の都市部流出が続く中で、地元出身者が戻って働くUターン人材、都市部から地方へ移住して働くIターン人材をどのように呼び込むかは、企業の将来に関わる重要なテーマになっています。
採用活動では、給与、仕事内容、キャリア形成、福利厚生、企業の将来性が重視されます。しかし、地方企業がUターン・Iターン人材を採用し、長く定着してもらうためには、「どのような場所で働くのか」も無視できません。
本社ビルは、単なる事務所ではありません。求職者が会社の雰囲気を感じ、社員が毎日働き、来客や地域関係者が企業の姿勢を見る場所です。古く使いにくい本社ビルのままでは、会社の実力や魅力が十分に伝わらない場合があります。一方で、働きやすさ、コミュニケーション、Web会議、研修、休憩、駐車場、地域との接点を考えた本社ビルは、採用活動や社員定着を支える重要な拠点になります。
厚生労働省の「LO活 for company」では、地方企業の人材不足対策としてUIJターン採用に関する情報を発信しており、地方企業が首都圏の学生や第二新卒者を採用するためのノウハウも整理されています。 また、マイナビの2026年5月度「中途採用・転職活動の定点調査」では、前年と比べてUターンを希望する人材を採用した企業が31.0%だったことが示されています。
ただし、本社ビルを新しくすれば自動的にUターン・Iターン人材が集まるわけではありません。重要なのは、採用したい人材が働き続けられる環境を、建物計画の段階から具体的に整理することです。
本記事では、地方企業がUターン・Iターン人材を呼び込むために、本社ビル建設・本社リニューアルで確認すべき採用、定着、働く環境、地域連携、建物計画のポイントを解説します。
Uターン・Iターン人材とは何か
Uターン人材とは、地方出身者が都市部へ進学・就職した後、出身地や地元周辺に戻って働く人材を指します。たとえば、地方出身者が東京や大阪で働いた後、地元企業へ転職するケースです。
Iターン人材とは、都市部出身者が地方へ移住して働く人材を指します。出身地とは関係のない地域に移住し、その地域の企業で働くケースです。
これに加えて、Jターンという言葉もあります。Jターンは、地方出身者が都市部へ出た後、地元そのものではなく、地元に近い地方都市や別の地方都市へ移住して働くケースを指します。これらをまとめてUIJターンと呼ぶことがあります。
ただし、一般の求職者や企業担当者にとっては、UIJターンという言葉がやや分かりにくい場合もあります。そのため、採用広報や記事タイトルでは、Uターン・Iターンという表現を使い、本文内でUIJターンを説明する方が伝わりやすい場合があります。
地方企業が本社ビル建設を考える際には、Uターン・Iターン人材を「遠方から来る特別な人材」としてだけでなく、将来の中核人材として受け入れられる環境を整えることが重要です。
本社ビルは採用広報の場になる
地方企業の採用活動では、会社説明会、Web面接、求人票、採用サイトが重要です。しかし、最終的に求職者が入社を判断する段階では、「実際にどのような場所で働くのか」が大きな判断材料になります。
本社ビルは、求職者が会社を訪問したときに最初に目にする場所です。エントランス、受付、会議室、執務空間、社員の雰囲気、清潔感、設備の使いやすさは、会社の印象に直結します。
特にUターン・Iターン人材は、転職と同時に生活環境も変える可能性があります。そのため、「この会社で働き続けられるか」「地方でキャリアを築けるか」「会社に将来性があるか」を慎重に見ています。古い建物でも丁寧に管理され、働きやすく整備されていれば信頼感につながります。一方、老朽化が目立ち、会議室や休憩室が不足し、通信環境が弱い本社では、企業の魅力が伝わりにくくなる場合があります。
本社ビルは、豪華である必要はありません。しかし、求職者に対して「ここで働くイメージ」を持ってもらえる建物であることが重要です。
若手人材は「働く環境」も見ている
Uターン・Iターン人材を採用する場合、給与や仕事内容だけでなく、働く環境の整備が重要になります。厚生労働省のLO活 for companyでも、UIJターン就職者が働きやすい現場づくりに関する情報が整理されており、オンライン説明会や面接、教育制度、福利厚生、地域との接点などが採用・定着に関わる要素として紹介されています。
若手人材や転職者は、オフィスの見た目だけを見ているわけではありません。集中して働ける場所があるか、Web会議がしやすいか、会議室が足りているか、休憩できる場所があるか、トイレや更衣室が清潔か、駐車場が使いやすいか、通信環境が安定しているかといった日常的な使いやすさも確認しています。
地方企業では、都市部のように駅近オフィスや大型商業施設が周辺にあるとは限りません。そのため、本社ビル内に働きやすい環境をどこまで用意するかが、採用・定着に影響する場合があります。
特に、都市部で働いた経験のあるUターン人材やIターン人材は、働き方やオフィス環境に対する期待値が高い場合があります。地方企業であっても、Web会議、フリーアドレス、集中ブース、休憩スペース、研修室など、現代の働き方に合った空間づくりを検討する必要があります。
地方本社ビルに必要な執務環境
地方本社ビルを建てる場合、最初に考えるべきなのは執務環境です。机と椅子を並べるだけでは、採用や定着につながるオフィスにはなりません。
まず、業務内容に合った執務スペースが必要です。総務、人事、経理、営業、設計、開発、カスタマーサポート、管理部門など、部門ごとに必要な働き方は異なります。電話が多い部署、集中作業が多い部署、社外とのWeb会議が多い部署、紙資料を扱う部署では、必要なスペースや設備が変わります。
次に、会議室の数と種類を整理します。大人数会議室だけでなく、少人数会議室、1on1用の小部屋、Web会議室、役員会議室、来客会議室を分けて考える必要があります。会議室が不足すると、社員は執務スペースでWeb会議を行うようになり、周囲の集中を妨げる原因になります。
また、地方本社では拠点間連携が重要です。東京、大阪、名古屋などの既存拠点や、取引先、採用候補者、自治体、学校とオンラインでつながる機会が多くなります。そのため、Web会議に適した遮音、照明、背景、通信、予約管理が必要になります。
地方本社ビルは、都市部オフィスの縮小版ではありません。地方企業の業務、採用、地域連携、車通勤、オンライン会議を前提に、独自の使い方を設計する必要があります。
Web会議室・集中ブースは採用力にも関わる
Uターン・Iターン採用では、採用候補者が遠方に住んでいる場合が多くなります。そのため、オンライン面接やWeb説明会は重要な採用手段になります。
LO活 for companyでも、オンラインで場所を問わず説明会や面接を行えることにより、遠方に住むUIJターン就職者へリーチしやすくなると説明されています。
本社ビルにWeb会議室や集中ブースが不足していると、採用面接、社内会議、取引先との打ち合わせがしにくくなります。執務エリアで面接を行えば、周囲の音が入り、会社の印象にも影響します。機密性の高い面談や人事面接では、遮音性のある空間が必要です。
Web会議室を設ける場合は、単に小部屋を作るだけでは不十分です。遮音、空調、換気、照明、通信、電源、カメラ位置、背景、予約管理を考える必要があります。ブースを設置する場合も、消防、空調、換気、避難経路、電源容量を確認する必要があります。
地方企業がUターン・Iターン人材を採用するには、遠方の候補者とスムーズに接点を持てる環境が重要です。本社ビルのWeb会議環境は、採用活動の質にも関わります。
研修室・見学対応スペースを整える
Uターン・Iターン人材を採用した後、定着につなげるには教育・研修体制が重要です。入社後に会社のルール、業務内容、地域の取引先、現場、製品・サービスを理解できなければ、早期離職につながる可能性があります。
地方企業の本社ビルでは、研修室や説明会スペースを設けることで、新入社員研修、中途社員研修、採用説明会、地域学校との連携、インターンシップ、取引先向けセミナーに活用できます。
本社ビルに見学対応スペースや会社説明に使える会議室があれば、採用広報や地域連携に活用しやすくなります。製造業であれば、製品展示、工場見学前の説明、技術紹介スペースを設けることも考えられます。建設業や設備業であれば、施工実績、模型、映像、研修設備を見せることで、仕事の具体的なイメージを伝えやすくなります。
ただし、採用イベント用の空間を過大に作る必要はありません。普段は会議室として使い、必要なときに説明会や見学対応にも使える可変性を持たせることが重要です。
研究開発機能を本社ビルに入れる場合の注意点
地方本社ビルに、研究開発、試験、測定、設計、品質管理などの機能を併設する場合は、一般的なオフィス計画とは異なる確認が必要になります。
たとえば、精密機器、測定機器、試験装置、分析装置、サーバー機器などを扱う場合、床荷重、電源容量、電源品質、空調、温湿度管理、通信、セキュリティ、搬入経路、メンテナンススペースが建物計画に影響します。また、機器の種類によっては、防振・防音・遮音・排熱・排気・薬品保管などの検討が必要になる場合もあります。
なお、研究施設の防振・防音基準は、建築基準法上、研究施設という用途だけを理由に一律の性能基準が定められているものではありません。建築基準法は、建築物の敷地、構造、設備、用途に関する最低基準を定める法律であり、個別の研究内容や機器性能まで一律に指定するものではないためです。
そのため、扱う研究内容、使用する機器、発生する騒音・振動、近隣環境、自治体条例、騒音規制法・振動規制法の対象となる設備の有無によって、必要な仕様は個別に異なります。騒音規制法・振動規制法では、指定地域内の工場・事業場や特定施設等を対象に、生活環境保全のための規制や届出が関係する場合があります。
研究開発機能を本社ビルに入れる場合は、「研究室を一部設けるだけ」と軽く考えず、計画段階で設計者、設備設計者、専門機器メーカー、行政窓口等へ確認することが不可欠です。特に、住宅地や学校・病院などが近い敷地では、騒音・振動・搬入時間・排気・安全管理に関する配慮が必要になる場合があります。
採用面でも、研究開発人材や技術人材は、働く環境や設備水準を重視することがあります。研究機能を地方本社ビルに取り込む場合は、採用広報として見せる空間と、機器を安定して使うための技術的条件を分けて整理することが重要です。
駐車場・車通勤を軽視しない
地方本社ビルでは、駐車場計画が重要です。都市部のオフィスと違い、地方では車通勤が前提になる地域も多くあります。社員用駐車場、来客駐車場、営業車、社用車、配送車両、採用面接者の駐車場をどう確保するかを建設前に整理する必要があります。
駐車場が不足すると、社員満足度や採用にも影響します。せっかく働きやすいオフィスを整備しても、毎日の通勤で駐車場が使いにくい、雨の日に遠い駐車場から歩かなければならない、来客時に駐車場所がない、といった状況では印象が悪くなります。
また、地方本社では雪、雨、強風、猛暑への対応も考える必要があります。屋根付きの出入口、駐車場からの歩行者動線、外灯、防犯カメラ、除雪スペース、EV充電設備の将来対応なども検討項目になります。
Uターン・Iターン人材を呼び込むためには、オフィスの内装だけでなく、日常的に通いやすい建物であることが重要です。駐車場と外構は、採用サイトには見えにくい部分ですが、社員の働きやすさに直結します。
休憩室・食堂・更衣室は定着に影響する
社員定着を考えるうえで、休憩室、社員食堂、更衣室、ロッカー、シャワー室、授乳室、仮眠スペースなどの福利厚生スペースも重要です。
地方本社では、周辺に飲食店やカフェが少ない場合があります。その場合、社員が昼食を取れるスペースや、簡単な食事を用意できる場所があるかどうかは、日常の満足度に影響します。社員食堂まで設けない場合でも、休憩室、給湯、電子レンジ、冷蔵庫、飲料スペースを整えるだけで働きやすさは変わります。
また、製造業、建設業、設備業、物流業などでは、事務職と現場職が同じ本社を使う場合があります。この場合、更衣室、ロッカー、シャワー、作業着管理、出入口動線を整理する必要があります。
Uターン・Iターン人材は、入社後に地域生活と仕事を同時に始めることがあります。職場に落ち着ける場所があるか、気軽に相談できる場があるか、休憩時間に孤立しないかは、定着にも関係します。
本社ビル建設では、執務席や会議室だけでなく、社員が長く働き続けるための空間を計画することが重要です。
地域との接点をつくる本社ビル
地方企業がUターン・Iターン人材を呼び込むには、地域とのつながりも重要です。Iターン人材にとっては、仕事だけでなく地域生活へのなじみやすさが定着に影響します。Uターン人材にとっても、地元で新しいキャリアを築ける実感が必要です。
本社ビルに地域との接点を持たせることは、採用や企業ブランディングに役立つ場合があります。地域向けの説明会、学生向け見学会、インターンシップ、取引先向けセミナー、地域イベントへの一部開放などが考えられます。
ただし、地域開放を行う場合は、セキュリティと動線を明確にする必要があります。社員エリア、来客エリア、地域利用エリアを分け、情報管理や安全管理に支障が出ないように設計する必要があります。
また、地域と連携する本社ビルは、自治体や学校、商工団体との関係づくりにも活用できます。採用イベントを外部会場で行うだけでなく、自社の本社ビルに来てもらうことで、仕事の現場や社員の雰囲気を直接伝えやすくなります。
地方本社ビルは、地域社会に対して企業の存在感を示す場所でもあります。採用広報、地域連携、企業ブランドを意識した建物計画が重要です。
家族の生活環境も間接的に影響する
Uターン・Iターン人材の採用では、本人の仕事だけでなく、家族の生活環境も間接的に影響します。転居を伴う場合、住まい、子育て、学校、医療、買い物、配偶者の仕事、交通環境などが判断材料になります。
本社ビルだけでこれらをすべて解決することはできません。しかし、企業が移住者を受け入れる姿勢を示すことはできます。たとえば、自治体の移住支援情報を案内する、地域の住環境や交通情報をまとめる、社内に相談窓口を設ける、地域交流の機会を用意することが考えられます。
本社ビル建設では、移住支援情報を提供できる来客スペース、面談室、採用説明会スペースを設けることで、候補者と丁寧にコミュニケーションを取ることができます。建物そのものだけでなく、採用・定着の運用と一体で考えることが重要です。
本社ビルは豪華にすればよいわけではない
採用力を高める本社ビルというと、デザイン性の高い建物や大きなエントランスを想像するかもしれません。しかし、Uターン・Iターン人材に選ばれるために、必ずしも豪華な本社ビルが必要なわけではありません。
重要なのは、企業の実態と働き方に合った建物であることです。過度に豪華な内装や使われない共用部に投資しても、採用や定着に直結しない場合があります。むしろ、会議室が足りない、空調が効きにくい、駐車場が不足している、休憩室が使いにくい、通信が不安定といった日常的な問題を解決する方が効果的な場合があります。
本社ビル建設では、採用効果につながる部分と、過剰投資になりやすい部分を分けて考える必要があります。エントランスや受付は企業の印象に関わりますが、社員が毎日使う執務空間、会議室、休憩室、トイレ、駐車場、通信環境も同じくらい重要です。
発注者は、「見せるための本社ビル」と「働き続けるための本社ビル」のバランスを取る必要があります。
新築だけでなくリニューアルも選択肢になる
Uターン・Iターン人材を呼び込むための本社づくりは、新築だけが選択肢ではありません。既存本社ビルのリニューアルでも、採用・定着につながる改善は可能です。
たとえば、会議室の再編、Web会議ブースの設置、休憩室の改修、トイレの更新、照明のLED化、空調更新、エントランスの改善、サイン計画の見直し、駐車場動線の改善などは、段階的に実施できる場合があります。
既存本社ビルを使い続ける場合は、建物の老朽化状況を確認する必要があります。耐震性、屋上防水、外壁、空調、電気、給排水、通信、消防設備に課題がある場合、内装だけをきれいにしても長期的な改善にはなりません。
新築、建て替え、リニューアルのどれが適しているかは、建物の状態、採用課題、予算、工事中の業務継続、将来の社員数によって異なります。発注者は、採用目的だけでなく、建物全体の寿命と維持管理費も含めて判断する必要があります。
採用担当と建設担当が連携する
本社ビル建設やリニューアルは、総務・施設担当だけで進めると、採用や定着の視点が不足する場合があります。一方で、採用担当だけでは、建設費、法令、設備、工期、維持管理の判断が難しくなります。
Uターン・Iターン人材を意識した本社ビルを計画するなら、経営層、総務、人事、採用、情報システム、現場部門、施設管理担当が早い段階から連携することが重要です。
採用担当は、候補者からよく聞かれる質問、会社説明会で伝えたい内容、面接時の課題、入社後の定着課題を把握しています。建設担当は、建物の制約、設備、予算、工期、法令、維持管理を把握しています。両者が連携することで、採用広報と実際の働きやすさを両立しやすくなります。
本社ビルは、採用サイトの写真に載せるためだけの建物ではありません。実際に入社した社員が毎日使い、長く働くための場所です。採用と定着の両方を見据えた計画が必要です。
地方自治体との連携も確認する
地方企業がUターン・Iターン人材を呼び込む場合、自治体との連携も重要になります。移住支援、就職支援、企業立地支援、子育て支援、住宅支援、合同説明会、インターンシップなど、自治体や関係機関が実施する支援策を活用できる場合があります。
厚生労働省のLO活では、地方企業向けに各種助成金・補助金制度の紹介も行っており、UIJターン者採用施策に関する情報が整理されています。
本社ビル建設と自治体支援を組み合わせる場合は、制度要件、申請時期、雇用計画、投資額、対象経費を確認する必要があります。自治体支援や補助金は、使える場合もありますが、必ず採択されるものではありません。
発注者は、建物計画、採用計画、自治体支援、移住支援を別々に考えるのではなく、早い段階で連携可能性を確認することが重要です。
BCP・安心感も人材定着に関わる
Uターン・Iターン人材にとって、地方で長く働けるかどうかは、会社の安定性や災害時対応にも関係します。本社ビルが災害時に使えない、停電時に業務が止まる、通信が不安定、浸水リスクが高いといった状況では、社員の安心感にも影響します。
地方本社ビルでは、耐震性、浸水リスク、非常用電源、通信二重化、備蓄倉庫、災害時の一時滞在、駐車場、避難動線を確認することが重要です。特に地方では、災害時に道路や公共交通が止まる可能性もあるため、社員が一時的に待機できる環境を整えることも検討対象になります。
また、BCP対応は採用広報にも関係します。企業が社員の安全や事業継続をどう考えているかは、求職者にとっても信頼材料になります。
本社ビル建設では、働きやすさだけでなく、災害時にも社員と事業を守れる建物かどうかを確認する必要があります。
CM方式で採用・定着・建物条件を整理する
Uターン・Iターン人材を呼び込むための本社ビル建設では、採用、人事、建設、設備、自治体支援、BCPが複雑に関係します。単に設計者へ「働きやすいオフィスにしたい」と伝えるだけでは、具体的な建物条件に落とし込めない場合があります。
コンストラクションマネジメント方式では、発注者側の立場で、採用・定着の目的を建物条件に整理します。どの人材を採用したいのか、どの部門を強化したいのか、どのような働き方を想定するのか、どの空間に投資すべきかを整理し、設計・施工・コスト・スケジュールへ反映します。
特に地方本社ビルでは、車通勤、Web会議、研修、休憩、地域連携、採用イベント、福利厚生、災害対応など、都市部オフィスとは異なる条件が必要になる場合があります。研究開発機能を併設する場合は、防振・防音・温湿度管理・床荷重・電源品質など、オフィス部分とは別の技術的条件も加わります。
CM会社は、発注者の経営目的を確認しながら、過剰投資を避け、採用・定着に効果が出やすい部分と、法令・設備・運用上必要な部分を整理する役割を担います。
本社ビルは建てて終わりではありません。採用活動に使い、社員が働き、地域と関係を築きながら長く運用する建物です。建設前の段階で、採用・定着・運用を一体で考えることが重要です。
発注者が確認すべきこと
地方企業がUターン・Iターン人材を意識して本社ビルを建設・リニューアルする場合、まず採用したい人材像を明確にする必要があります。新卒なのか、中途なのか、専門職なのか、管理職なのか、都市部経験者なのかによって、求める働く環境は変わります。
次に、現在の本社ビルの課題を整理します。会議室不足、Web会議環境、駐車場、休憩室、空調、トイレ、通信、エントランス、採用説明会スペース、社員動線を確認します。
また、採用活動に使える空間を検討します。会社説明会、面接、見学、インターンシップ、研修、地域向けイベントに対応できるスペースがあるかを確認します。
さらに、社員定着に関わる空間を確認します。休憩室、食堂、更衣室、ロッカー、相談スペース、1on1スペース、集中ブース、福利厚生スペースを検討します。
研究開発機能、試験室、測定室、品質管理室などを本社ビル内に設ける場合は、防振・防音・温湿度管理・床荷重・電源品質・騒音振動規制の確認も必要になります。一般的な事務所仕様で足りるのか、専用の設備条件が必要なのかを早期に判断することが重要です。
最後に、建設費と効果のバランスを確認します。採用のために本社ビルを整える場合でも、すべてを高仕様にする必要はありません。採用候補者に伝わりやすく、社員が日常的に使う空間から優先順位をつけることが重要です。
地方企業がUターン・Iターン人材を呼び込むためには、求人票や採用サイトだけでなく、実際に働く本社ビルの環境を整えることも重要です。本社ビルは、求職者が会社の雰囲気を感じ、社員が毎日働き、地域とつながる拠点になります。
ただし、本社ビルを新しくすれば自動的に人材が集まるわけではありません。重要なのは、採用したい人材が働き続けられる環境を具体的に整えることです。Web会議室、集中ブース、研修室、休憩室、駐車場、通信環境、地域連携スペース、BCP対応など、地方本社ならではの条件を建設前に整理する必要があります。
また、研究開発機能や試験機能を本社ビルに併設する場合は、一般的なオフィス計画とは別に、防振・防音・温湿度管理・床荷重・電源品質・騒音振動規制などの確認が必要になる場合があります。研究施設の防振・防音については、建築基準法上の一律規定だけで判断するのではなく、使用機器、研究内容、近隣環境、自治体条例、関係法令を踏まえて個別に確認することが重要です。
Uターン・Iターン人材は、仕事だけでなく、働く場所、地域生活、家族の生活、将来のキャリアを含めて入社を判断する場合があります。地方企業は、給与や仕事内容だけでなく、働く環境と受け入れ体制を分かりやすく示すことが求められます。
コンストラクションマネジメントの視点では、本社ビル建設は単なる建築工事ではなく、採用・定着・地域連携・企業ブランディングを支える経営投資です。発注者は、建物を建てる前に、どの人材を採用したいのか、どのような働き方を実現したいのか、どの空間に投資すべきかを整理し、過剰投資を避けながら実用性の高い本社ビルを計画することが重要です。
【重要事項】
本記事は、地方企業の本社ビル建設・本社リニューアル、Uターン・Iターン採用、社員定着、働く環境づくりに関する一般的な考え方を整理したものです。実際の採用効果、社員定着、建設費、設計条件、補助金、自治体支援、税制、法令対応、工期、運用方法等は、企業規模、所在地、業種、採用方針、建物用途、敷地条件、地域の雇用環境により異なります。
また、本社ビル建設や本社リニューアルによって、Uターン・Iターン人材の採用や社員定着が必ず実現するものではありません。採用効果は、給与水準、仕事内容、キャリア形成、地域生活、社内制度、企業文化、採用広報、受け入れ体制など複数の要素に左右されます。
研究開発機能、試験室、精密機器、測定機器等を本社ビル内に設ける場合、防振・防音・温湿度管理・床荷重・電源品質・騒音振動規制等の確認が必要になる場合があります。必要仕様は、研究内容、使用機器、近隣環境、自治体条例、騒音規制法・振動規制法その他関係法令により異なるため、計画段階で必ず設計者、設備設計者、専門機器メーカー、行政窓口等へ確認してください。
UIJターン採用、自治体支援、助成金・補助金制度は、年度や地域によって内容、対象要件、申請時期、支給条件が変わる可能性があります。制度活用を前提に計画する場合は、必ず最新の公募要領、自治体窓口、関係機関の情報を確認してください。
実際に地方本社ビルの新築、建て替え、リニューアル、採用拠点整備、地域連携スペース整備、研究開発機能の併設等を検討する場合は、必ず設計者、施工会社、採用担当者、社会保険労務士、自治体窓口、金融機関、建設マネジメント会社等に確認し、個別条件に応じた検討を行ってください。


